経団連は17日、提言「高齢社会に対応した住まい・まちのあり方~より長く、自立して、健康に暮らす住まい・まちの実現に向けて」を公表するとともに、関係方面へ建議した。わが国のみならず欧州、アジア新興国においても高齢化が進むなか、世界に先駆けて超高齢化に対応することが重要との問題意識のもと、「より長く自立して住む」「快適かつ健康に過ごす」の二つの観点から、具体的な施策を求めている。概要は次のとおり。
■ より長く自立して住む
長年住み慣れた家や地域を離れることへの高齢者の抵抗感は強い。住み慣れた地域で高齢者の生活を支える「エイジング・イン・プレイス」の実現に向け、さまざまな分野の施策を連携して展開していく必要がある。
- (1)高齢者向け住まいの整備と住み替えの円滑化
- バリアフリー化や防災などの居住環境の改善
- 自宅での生活継続が困難な場合に備えた住み替え先の確保
- 高齢者向け住宅・施設の種別の簡素化、立地状況の見える化
- 中古住宅市場の活性化等を通じた円滑な住み替えの促進
- 自治体間連携による移住を伴う住み替えにかかる環境整備
- (2)地域の実情に合わせた地域包括ケアシステムの機能強化
- 都市部=マネジメント層を含めた介護人材の確保、地方部=マーケット密度が低いことへの対応
- 地域の拠点となる施設の整備とこれら施設と中核医療機関との連携強化
- 医療、看護、介護等の職種を越えた連携強化
- 医療や介護、生活支援等のサービス供給に際し、企画構想段階から民間事業者の考えを反映
- 介護等に従事する家族への支援の検討
- (3)遠隔診療・遠隔介護など在宅医療・在宅介護におけるICTをはじめとする最先端技術の活用
- ガイドラインの制定や医師法・薬事法にかかる規制の緩和など、遠隔診療・介護の高度利用に向けた環境整備
- 個人情報保護や医療機関との情報連携にかかるルールの整備
- 最先端技術を用いた医療、介護におけるイノベーションの推進
■ 快適かつ健康に過ごす
高齢社会が抱える課題への最も有効な解決策は、心身ともに健康で自立した高齢者を増やすことである。まちづくりを通じたポピュレーションアプローチやヘルスケア産業の振興により、健康増進を総合的に推進していくことが重要である。
- (1)まちのコンパクト化
- 徒歩圏内で行政、医療、介護、小売、金融等のサービスを提供することで、自然体で歩いてしまうまちづくりを実現
- 既存の交通インフラやLRT、BRTなど公共交通網の再整備
- 都市計画による誘導や税制面・財政面での支援措置により、郊外から中心部への都市機能の移転を推進
- (2)地域社会とのつながり確保
- コミュニケーション醸成に資する社会資本整備や高齢者の活躍の場・機会の創出などソーシャル・キャピタルの充実
- 高齢者に外出を促す仕掛けづくり
- (3)ICTの利活用による健康増進を促す環境整備
- 健康データの見える化等を通じて、自助による健康づくりを促進
- 健康データの蓄積・解析により、指導・予防を高度化
- SNSを活用し、世代間交流や地域社会への参画を促進
- (4)ヘルスケア産業の振興
- 企業は健康にかかる幅広いニーズを掘り起こし、魅力ある商品・サービスの提供、市場の拡大に努力
- 行政は規制緩和などヘルスケア産業振興に向けた環境整備を推進
【産業政策本部】