経団連の企業行動委員会社会的責任経営部会(有原正彦部会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、CSRレビューフォーラム(CRF)の山口智彦、岸本幸子両共同代表から、ステークホルダー・エンゲージメントに関する取り組みと課題を聞くとともに、委員間での意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
■ CSRレビューフォーラム設立の目的
CSRレビューフォーラムは、NPO・NGOのアライアンスであり、企業と市民社会組織(NGO・NPO、消費者、労働など)が本質的なステークホルダー・エンゲージメントを行うことを目指し、設立された。日本では、これまで市民セクターを支える社会基盤が弱く、発言力が十分に確立されていない。また、これまでの企業とステークホルダーとの対話の場では、テーマや提供情報の範囲があらかじめ企業側で設定されていることが多く、意見交換も一方通行になりがちだった。これらの問題意識から、複数のNPO・NGOがアライアンスを組んで広い領域で企業と深く対話することにより、社会的課題の解決につなげたいという思いでCRFを設立した。
■ CRFのステークホルダー・エンゲージメントの特徴
CRFによるレビューの主な特徴は5点である。1点目は、企業とステークホルダーの対話の共通言語としてISO26000を活用すること、2点目は、レビュアーが対象企業の事業環境や関連する社会・環境動向等に関する知識に基づき、現実的なステークホルダーとして企業をレビューすること、3点目は、テーマ設定等の設計段階から参画し、レビューに必要となる資料の開示度合、レビュー結果の取り扱いまで、事前に協議すること、4点目は、社会的課題を解決する「攻めのCSR」の視点でのレビューを実施すること、5点目は、監査やコンサルタントとは異なり、社会的課題の解決のために必要なポイントを提示することを基本的なスタンスとしていることである。
■ ステークホルダー・エンゲージメントによる改善効果と今後の課題
これまでのCRFの活動を通じて認識されたCSRの改善効果としては、「ステークホルダーの声を起点としたPDCAサイクルが構築される」「デュー・ディリジェンス、人権といった概念について、部門の壁を越えて理解が促進される」「レビュアーと企業との間の相互理解が進み、主要な論点が明確化される」といった事例が挙げられる。これらの経験から、企業にとっては、外部との対話というプロセスそのものが、CSRの社内浸透に対するドライビングフォースになるということを実感している。
今後の課題としては、1点目は「社会的課題を解決する」という視点、グローバルな視野の「攻め」のCSRを志向していくこと、2点目は、レビューにおける企業のCSR担当者への過度な負担を軽減すること、3点目はレビュアー側の企業理解を深化させること、4点目は、サプライチェーンマネジメントや社会貢献等の個別具体的な企業行動に関するエンゲージメントをより深めていくことである。
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講演後の委員間の討議では、「ステークホルダー・エンゲージメントの現状と課題」をテーマとして、各社の具体的な取り組み事例を交えて、活発な意見交換が行われた。
【政治社会本部】