経団連(米倉弘昌会長)は、提言「アラブ諸国との経済協力のあり方について」を取りまとめ、19日に公表するとともに、関係方面に建議した。
提言は、日本とアラブ諸国との経済協力の道筋を官民連携で推進していくうえで、特に優先的に取り組むべき課題や諸施策を取りまとめ、その実現を求めるもの。概要は次のとおり。
■ 基本的な考え方
経済界は、安倍政権による一連の戦略的かつ実効的な対アラブ外交を高く評価している。今後、成長戦略や民間外交の延長線上にアラブ諸国との経済関係の重要性を位置づけ、アラブ各国との関係強化を自ら実践するとともに、次に挙げる6点の「取り組むべき課題」の実現を求める。
■ 取り組むべき課題
第一に、エネルギー・資源分野での協力である。わが国では震災以降、石油・天然ガスへの依存が高まっており、アラブ諸国との二国間協力や生産国と消費国の多国間対話が、ますます重要になっている。そこで、わが国の開発権益の確保や産油国との関係強化のため、官民が連携して、エネルギー資源開発の人材育成、省エネ・環境等の先端技術の移転、下流産業の育成で協力していく。
第二は、インフラ整備での協力である。造水、水道、発電システム等の分野でわが国のインフラ展開を後押しするため、国際協力機構(JICA)の海外投融資や国際協力銀行(JBIC)の輸出金融、投資金融、出資、日本貿易保険(NEXⅠ)の保証機能などの拡充を積極的に活用すべきである。
第三は、貿易・投資円滑化のための枠組み構築である。アラブ諸国に対する貿易・投資関係の拡大のためには、現在日本企業が対応に苦慮している過大なパフォーマンス要求や自国民雇用要求の緩和、人の移動に関する規制の緩和、関税の引き下げ等が必要である。加えて、湾岸協力理事会(GCC)との間の自由貿易協定交渉の早期再開と、投資協定および租税条約をまだ締結していない多くの国々との早期締結が重要となる。
第四は、アラブ諸国が目指している多角化への協力の推進である。アラブ諸国は、資源・エネルギー分野に依存するいわゆる「モノカルチャー構造」を改革し、若年労働力を吸収するため、非資源・エネルギー産業の育成と雇用の拡大を急いでいる。そこで、これらの分野でわが国官民が連携して積極的に協力していく。
第五は技術協力と人材育成での協力である。アラブ諸国は、若年労働者の雇用拡大とも関連し、人材育成や技術移転での日本企業の協力に期待を寄せている。これに応えるため、JICAのコスト・シェア技術協力スキームや海外産業人材育成協会(HIDA)スキームの活用による研修生、専門家、留学生受け入れの拡大、わが国最先端技術の移転、大型インフラ案件の受注を通じたわが国の技術標準の定着などを図るべきである。
第六は、安全の確保と治安面での協力である。治安は企業にとって投資環境の最優先事項であり、アラブ諸国には、治安維持・改善と危険情報の把握に努めること、わが国政府には、海外における邦人保護に万全な態勢で取り組むことを要望する。また、関係国との連携による物流要衝、シーレーンの安全確保にも努めるよう求める。
以上6点の考え方をもとに、アラブ諸国との間で、一次エネルギーの確保という観点にとどまらない、重層的、持続的、安定的な経済関係をさらに発展させていく予定である。
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経団連は、アラブ諸国との経済関係の構築の一環として、12月16、17の両日、都内で官民合同により「第3回日本・アラブ経済フォーラム」を開催する。同会合を含むアラブ諸国とのさまざまな交流の機会をとらえ、提言の実現に取り組んでいく。
【国際協力本部】