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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年11月7日 No.3153 第7回関西企業倫理セミナー開催 -「企業倫理とグローバル戦略経営」/桑山一橋大学大学院法学研究科特任教授が講演

講演する桑山教授

経団連は「企業倫理月間」の一環として10月29日、大阪市内で約200名の参加者を得て、第7回関西企業倫理セミナーを開催した。

開会にあたり、経団連の吉田豊次企業行動委員会企画部会長から、グループ企業全体における企業倫理を徹底すべく、経団連の企業行動憲章および同実行の手引きを参考にしながら、事業活動全般の総点検を行うとともに、体制を強化するよう呼びかけた。

引き続き、一橋大学大学院法学研究科の桑山三恵子特任教授が「企業倫理とグローバル戦略経営」をテーマに講演を行った。桑山教授の講演概要は次のとおり。

■ 激変する経営環境と企業倫理

ITの普及に伴うグローバリゼーションの急速な進展により、企業の経営環境は劇的に変化している。このようななかでは、変化する環境に対処するための内的・外的コンピタンスを統合し、再構築する企業の能力が重要になる。法令遵守のみならず、国際的・社会的な倫理規範などのソフトローに能動的に対応することでグローバルリスクを乗り越え、企業の全社戦略や企業文化自体を競争優位にすることが可能となる。

代表的なソフトローとしては、ISO26000や国連グローバル・コンパクトなどが挙げられるが、すでに各国で法規制が整備されている贈賄防止、カルテル行為の禁止、紛争鉱物規制なども、法令化以前にはソフトローであった。企業は、現在ソフトローとして認識されている問題が法令化される前に、先手を打って社内・グループ内の体制を整えるべきであろう。

また国連では、ミレニアム開発目標(MDGs)に関し、2008年に「企業行動要請(BCtA)」を発足させている。これは、商業的利益と開発的利益を同時に追求する包括的なビジネスモデルに対し認証を与え、さまざまな付加価値を提供する仕組みであり、企業にとっても非常に有益なので、日本企業にも積極的に取り組んでほしい。

■ グローバル戦略経営と企業倫理の役割

企業のグローバル展開において、企業倫理が果たす役割としては、まず顧客の信頼の獲得がある。企業と消費者の間には情報の非対称性があり、消費者は企業を信頼して商品・サービスを購入するという信認の構造が存在するため、企業倫理による顧客の信頼の獲得が、ブランドの構築に深く関係してくることになる。

また企業倫理は、企業グループ内の信頼関係を強める効果がある。異なる価値観や文化が存在するなかで、企業倫理を通じて価値を共有することは極めて重要であり、従業員のモラルアップにもつながる。経営者の倫理観をグループ内の従業員に徹底する仕組みをつくるとともに、従業員の倫理観を育てることが、企業倫理担当者の使命である。

グローバル戦略経営と企業倫理は密接な関係にある。これからは海外の事業戦略(部分最適)の足し合わせではなく、グローバルな企業戦略(全体最適)を求める活動を行ってほしい。これは企業の持続的な能力、強みの獲得につながる。企業倫理はその基盤にもなるし、ソフトローを味方につけ、種々のグローバルリスクを超えていくことを可能にする。企業倫理の成果は、従業員のモラルアップ・モラールアップ、品質の向上、安全・安心なサプライチェーンの構築、社会的責任投資(SRI)を通じた株価の安定と上昇など多岐にわたり、これらを生み出す一連のプロセスが「信頼のコーポレートブランドづくり」である。企業倫理は企業にとってコストではなく投資ととらえ、企業経営に取り組んでほしい。

【政治社会本部】

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