経団連と北海道経済連合会(道経連、近藤龍夫会長)は9日、札幌市内のホテルで「第61回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長はじめ審議員会議長・副会長らが、道経連からは近藤会長はじめ会員約200名が参加。「持続的な経済成長の実現と北海道の役割」を基本テーマに、活動報告と意見交換を行った。また、懇談会後のパーティーには高橋はるみ北海道知事が出席し、参加者と懇談した。
開会あいさつのなかで道経連の近藤会長は、北海道経済の現況について、アベノミクスによる公共投資の増加を背景に建設業をはじめとする幅広い分野で改善がみられ、個人消費にもゆるやかな持ち直しの動きが広がっているとの認識を示した。そのうえで、これまで長期間にわたりマイナス成長の状態にある北海道経済を自律回復の軌道に乗せるために、「食クラスター活動」や「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」といった農水産業を核とした食産業の発展による経済活性化に取り組んでいることを説明した。さらに、国家戦略特区への指定を目指して提案した「JAPANフードピア」構想について紹介するとともに、経団連会員企業への協力を要請した。
最後に、電力需要のピークを迎える冬場の到来に向けて、電力の安定供給に対する懸念から泊原子力発電所の再稼働を国に対して要請していることを説明した。
続いてあいさつした経団連の米倉会長は、わが国経済の回復に向けた動きや、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催決定といった明るい兆しを本格的な再生と持続的な成長につなげていかなければならないとの認識を示すとともに、消費税率の引き上げ決定に対する安倍首相の決断を高く評価しており、今後の成長戦略の進展に対して期待すると述べた。
また、民間企業は、企業業績の改善を投資の増加、雇用の創造、報酬の引き上げにつなげていくという「経済の好循環」をつくり出すために、今こそ競争力の強化と力強い成長の実現に全力で取り組むことが必要との認識を示した。最後に、10月が企業倫理月間であることを紹介し、あらためて企業倫理の徹底についての理解と協力を求めた。
■ 活動報告
第1部の活動報告では、まず経団連側から(1)道州制の推進(畔柳信雄副会長)(2)産業の国際競争力の強化に向けた物流施策(宮原耕治副会長)(3)温室効果ガスの削減(渡文明審議員会議長)(4)経済連携(TPP等)の推進(勝俣宣夫副会長)(5)持続可能な財政運営の確立(石原邦夫副会長)(6)社会保障制度改革の推進(斎藤勝利副会長)――について、取り組み状況をそれぞれ報告した。
道経連側からは、(1)食クラスター活動とフード特区事業の推進(林光繁副会長)(2)高速交通体系の整備・活用と北海道経済の振興に向けた取り組み(山本邦彦副会長)――について報告があった。
農業の競争力強化における6次産業化への取り組みなど
■ 意見交換
第2部の意見交換では、道経連から、(1)農業の競争力強化における6次産業化への取り組み(2)防災・減災のための国土強靭化(ナショナル・レジリエンスのあり方)(3)電力安定供給確保とエネルギー政策の再構築(4)食の科学技術・イノベーションの推進(5)雇用分野における「規制改革に関する答申」の評価――について問題提起があった。
これに対して経団連から、(1)農業は成長戦略の柱の一つであるとともに、地域活性化に欠かせない重要な産業。農商工連携・6次産業化への取り組みを強化し、国内だけでなくグローバル市場に展開することができる力強い農業を実現することが必要(三浦惺副会長)(2)国土強靭化の取り組みを進めるにあたっては、防災・減災の観点に加えて産業競争力や地域活性化の観点も重要(大塚陸毅副会長)(3)当面の電力需給対策について、国民生活や企業活動に悪影響がないようにするため万全の対策を取るよう政府に強く訴えかけていく。また、中長期のエネルギー政策は成長戦略との整合性を確保する必要がある。エネルギー安全保障の観点から原子力を含む多様なエネルギー源を維持すべき(佐々木則夫副会長)(4)世界に誇れる健康長寿社会を実現するために、「食」と「健康」に関する最先端の研究開発を融合し推進していかなければならない。また、産学官の連携に加え、それぞれの国際競争力を高めることが、わが国全体の競争力強化のために重要(内山田竹志副会長)(5)答申の「正社員改革」には、経団連が4月に公表した提言と軌を一にする内容が盛り込まれており高く評価。わが国の労働規制の現状は画一的、硬直的で、グローバリゼーションの進展など経済社会の変化に柔軟に対応できるものではなく、規制・制度改革の確実な実行を求めていく(篠田和久副会長)――などのコメントがあった。
【総務本部】