現在、政府はエネルギー政策をゼロベースで見直すべく、年内を目途に新たな「エネルギー基本計画」の策定作業を進めている。
経団連では、今回の政府の動きを歓迎するとともに、成長戦略を実現するため、エネルギーが経済性のある価格で安定的に確保される政策の構築を求め15日、「今後のエネルギー政策のあり方に関する提言」を取りまとめ公表した。概要は次のとおり。
■ 当面の重要課題
福島県の復興・再生に不可欠である福島第一原子力発電所の汚染水問題、除染、廃炉措置について、国は前面に立って積極的に取り組まなければならない。
また、企業が安心して生産・投資計画を立てられるよう、今後3~5年程度の電力の安定供給確保のための工程表を明らかにすべきである。そのためにも、原子力発電所の再稼働プロセスを加速する必要がある。
■ 今後のエネルギー政策に関する基本的考え方
エネルギー自給率の低さや原油の約8割を中東に依存すること、各エネルギーには長所・短所があることを踏まえると、多様なエネルギー源を選択肢として維持しながら、安全性を前提に、エネルギーの安全保障、経済性、環境適合性(S+3E)の適切なバランスが確保されるエネルギー・ミックスが実現されなければならない。
■ エネルギー供給構造の強化
1.化石燃料
経済性および出力安定性の点で相対的に優れており、引き続き有効活用していくべきである。そのため、環境アセスメントの柔軟な運用、資源外交や国内資源開発の強化、高効率化・低炭素化に向けた研究開発が必要である。2.原子力
エネルギーの安全保障や経済的な価格での電力供給確保、地球温暖化防止の観点から、極めて重要なエネルギー源であり、安全性を大前提に、引き続きベース電源として活用していくとの基本的考えをエネルギー基本計画に明記すべきである。
そのうえで、原子力安全体制の強化・充実、原子力損害賠償制度の見直し、核燃料サイクルの確立が重要である。3.再生可能エネルギー
エネルギーの安全保障や地球温暖化防止の観点から高いポテンシャルを有するが、非効率・不安定等の問題を抱えており、これらの克服に向けた研究開発や規制改革が重要である。
現行の固定価格買取制度については、将来の国民負担増やイノベーションの阻害要因となるなどの問題が指摘されていることから、見直すべきである。4.電力システム改革
電力分野における競争的な市場環境の整備を進め、電力システムの効率化を図ることは重要な課題である。
他方、今後の改革の方向性をめぐり、さまざまなリスク要因が指摘されていることから、良質な電力の経済性のある価格での安定供給が確保されるよう、諸外国の経験も踏まえた丹念な検討が求められる。
■ エネルギー需要構造の高効率化
省エネルギーの推進に向け産業界としては、技術開発・普及に最大限取り組む。政府は、このような企業の取り組みを後押しする政策を進めるべきである。
将来のエネルギー需要を見通すにあたっては、成長戦略との整合性を確保するとともに、国民負担も含め、省エネの実現可能性を丁寧に検証する必要がある。
■ 革新的技術の開発・技術の国内外への普及
産業界は、革新的技術の開発に貢献し、国内外に普及させることにより、安全保障、経済成長、温室効果ガスの削減という三つの課題を世界規模で解決するとともに、わが国の成長につなげていく。
【環境本部】