経団連(米倉弘昌会長)は11日、東京・大手町の経団連会館で地域基盤強化委員会(大塚陸毅委員長)の第1回会合を開催し、古屋圭司国土強靭化担当大臣から、政府の国土強靭化への取り組みについて説明を受け、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 説明「政府の国土強靭化への取り組みと今後の方向性」
国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)は、従来から想定外の低頻度の大災害に対しても、人命・財産を守り抜くこと等を基本方針とした分野横断的な取り組みである。これは、非常時における対応力の強化のみならず、平時の競争力強化や成長戦略に寄与するものであり、今年の骨太の方針に盛り込まれた政策である。
国土強靭化の具体的な検討にあたり、まず、有識者によるナショナル・レジリエンス懇談会で、45個の「起きてはならない事態」を洗い出した。そのうえで、それらの事態を回避するために、各府省の既存の施策を表に整理した。その結果、表には空白部が多く、緊急に取るべき対策の必要性が明らかになり、各府省間の連携不足も課題となった。このため、今年度優先的に実施すべき施策群を約15のプログラムとして選別した。あわせて、これらを関係府省の局長級連絡協議会で検討し、2014年度概算要求に反映させるようにした。この結果、概算要求額は前年度比で1.42倍となった。
今後は、施策分野ごとの対応方針について検討を行う。検討対象には、サプライチェーンの多重性の確保ならびに各企業・グループを横断した事業継続計画の策定が含まれる。この結果をもとに、国土強靭化政策大綱を策定予定である。これには、各都道府県や経済団体からヒアリングした意見も反映させる。与党では、今秋以降「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」の成立を見込んでいる。成立後、内閣に国土強靭化推進本部を設置し、地方も含めて国土強靭化基本計画を策定する。
今般、20年の東京五輪開催が決定し、インフラの補修等が課題となる。費用を縮減するため、不断の技術革新を図ることが重要である。また、民間資金を積極的に活用する方策も検討していく。
最後に、ナショナル・レジリエンスは、公共投資のみならず、官民間のリスクコミュニケーションの充実等、ハード・ソフトの連携を掲げており、周知を徹底する。国民の理解のもと、着実に取り組みを前進させていきたい。
■ 意見交換
まず経団連から、「国土強靭化、復興、東京五輪はおのおの分野横断的な取り組みだが、どのように整合性を取り、連携を図るのか」「サプライチェーンの途絶を防ぐため、例えば、首都圏外環道のミッシングリンクを早期に解消すべき」「首都直下地震対策に限らず、中長期的な展望を持って各施策を推進していただきたい」との質問・意見が出された。
それに対し古屋大臣から、「五輪開催に関するインフラ整備は、国土強靭化とも重複する部分があり、今後オリンピック担当大臣や経団連からも意見をよく聞き、連携を図る」「東京五輪開催に合わせて、必要な取り組みを着実に実施することが重要だ」「中長期的展望のもと、日本のレジリエンスを向上させ、今後の成長力につなげていきたい」との回答があった。
■ 提言案審議
古屋大臣との意見交換後、提言案「地域基盤の強化に関する基本的考え方~レジリエントな社会の確立を求める」の審議が行われ、承認された。
■ 記者会見
委員会終了後、大塚委員長が記者会見を行い、提言を公表した。会見では、インフラ整備に関わる諸手続きの簡素化の具体的内容や今後の委員会の活動方針等について質疑がなされた。
これに対し、大塚委員長は、インフラ整備等にかかる行政上の諸手続きを簡素化し、工期を短縮することが必要としたうえで、「国土強靭化は分野横断的であるため、防災・運輸・流通等、関連する委員会で引き続き議論するとともに、各地の経済団体の意見もよくうかがい、検討を進める。また、適時会合を開催し、経団連の考え方を政府へ示していくことが重要だ」と述べた。
■ 提言手交
同日午後、大塚委員長は、自由民主党の二階俊博総務会長代行・国土強靭化総合調査会長、古屋大臣等を訪問し、提言を建議するとともに手交した。
◇◇◇
地域基盤強化委員会では、引き続き政府と連携しながら、ナショナル・レジリエンスにかかる取り組みを進めていく。
提言「地域基盤の強化に関する基本的考え方」
経団連は、政府・与党の国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)への積極的な取り組みを大いに評価している。
今後の検討において、産業競争力強化・地域活性化の観点も踏まえ、次の点を反映することを要望する。
1.国主導による基本方針の策定と優先順位づけ
- 国が基本方針を策定
- 厳しい財政状況等を踏まえ、施策の優先順位を設定、重点化
- 効率的・効果的インフラ整備のため、運輸・物流・観光等への活用も視野に諸手続きを簡素化
- (1)東日本大震災からの復興
- (2)高規格幹線道路・主要港湾・空港など基幹インフラの整備とミッシングリンクの早期解消、災害時の輸送の代替性等の確保
- (3)インフラの補修・維持管理等を優先・重点化
2.地域の関与のあり方
- 国の基幹インフラとの連続性・ネットワーク性を強化
- 道州制導入も見据えた地域主体の取り組み、県域を越えた連携の促進、コンパクトシティ化を推進
3.イノベーションによる効率化と先端技術の活用
- 画像情報やセンサーなど、最新のICT技術を積極的に活用、維持管理を効率化
- インフラの工期短縮、維持管理技術の向上にかかる研究・開発支援
4.ハード・ソフトの連携の推進
- 防災意識向上に向けたリスクコミュニケーションの充実
- 官民がリアルタイムで情報共有できる統合情報基盤の整備
5.民間活力を積極的に引き出すための環境整備
- PPP/PFIの大胆な活用
- 企業の自主的な対応を引き出す規制緩和・支援策等の検討
【政治社会本部】