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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年8月1日 No.3141 第109回労働法フォーラム -報告II 弁護士・岡正俊氏「労働契約の終了をめぐる法律上の留意点」

弁護士・岡正俊氏

経団連・経団連事業サービス主催、経営法曹会議協賛による「第109回経団連労働法フォーラム」が7月11、12の両日、都内のホテルで開催され、1日目の「裁判例を踏まえた労働時間管理の実務」(前号既報)に続き、2日目は、「労働契約の終了をめぐる法律上の留意点」をテーマに報告・検討が行われた。報告の概要は次のとおり。

■ 退職勧奨

使用者が辞職を勧める(あるいは合意解約の申し込みに対する承諾を勧める)退職勧奨の実務では、(1)労働者が応じないことを確定的に表明した後は原則退職勧奨を続けない(2)多人数・長期間・多回数・長時間の退職勧奨を行わない(3)大声を出さない(4)労働者の人格を否定する発言をしない(5)職場以外で行わない(6)記録が重要である(複数での対応やICレコーダーの利用等)――等がポイントとなる。また、本人に錯誤がある時は退職の意思表示が無効となることがあるが、解雇事由がないにも関わらず解雇事由があると誤解していた場合等、重大な錯誤でなければ無効にはならない。

■ 希望退職募集

希望退職募集は申し込みの誘因に当たるため、労働者の申し込みを、使用者が承諾することで合意解約が成立する。募集の対象者は、原則として使用者が自由に決めることができる。

■ 勤務成績不良を理由とする解雇

解雇権濫用の判断の考慮要素は、(1)単なる成績不良でない(2)企業経営等に現に支障・損害を生じまたは重大な損失を生じるおそれがある(3)今後の改善の見込みがない(4)不当な人事等の労働者に宥恕すべき事情がない(5)配転・降格ができない企業事情がある――の5点である。改善指導を行い、会社として解雇を避けるためにできる限りの対応をすることが重要となる。

■ メンタルヘルス不調等による雇用契約終了

労務提供不能で勤務に堪えないことは解雇事由に当たるが、私傷病休職制度がある場合は、原則として休職を命じ解雇猶予を与えるべきである。メンタルヘルス不調は、病気の有無や程度がわかりづらく、再発の危険があるため、診断書の提出や会社指定医の受診義務、休職期間等の通算規定の整備、専門医を産業医にする等、就業規則等の規定を整備することが望ましい。

また復職可否判断では、(1)病気なのか勤務可能なのか確認する(2)会社の制度でできるだけ労働者に有利に扱う(3)主治医の診断に反し復職不可とする場合、主治医の診断に対する疑問が合理的で反対意見の方が妥当であること、試し勤務をしたが病状が悪化したこと等が必要となる(4)原則、原職復帰で従前の業務を通常程度行える状態に回復したことを要するが、軽易な業務への配慮や他の業務への復職を認めるべきとされ得るため、このような対応ができない場合はその理由を具体的に準備しておく――の4点が重要である。

■ 有期労働契約の終了

実務上は、裁判例を踏まえ、(1)雇用継続を期待させるような言動をしない(2)契約更新手続きを厳格に行う(3)正社員等との違いを明確にする(4)理由のない契約更新を行わない(5)更新上限・不更新特約を設定・遵守する――等に注意すべきである。最初の契約時に上限・不更新特約を結んでいない場合であって新たに特約をつける際は、書面による説明、契約書への明記および本人の納得・同意を得ること、例外を設けないこと等が重要となる。

<質疑応答>

参加企業・団体からの質問に対し、「パフォーマンス不良を理由とする解雇は容易ではないが、能力不足の綿密な確認、適した職種探し、指導・注意の実施が重要」「メンタルヘルス不調からの復職では、従来会社にない業務までつくって対応する必要はない」等、実務的な対応策について、弁護士らによる活発な討論がなされた。

【労働法制本部】

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