経団連は7月16日、東京・大手町の経団連会館において、宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2013年度総会を開催し、収支決算報告、今後の活動計画や予算および下村委員長の再任が報告され、大宮英明副委員長の再任が承認された。また宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥村直樹理事長から同機構の取り組みについて説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ 講演
JAXAは、今年10月に発足10周年を迎える。この10年間に宇宙技術の実証を重ね、衛星に関する技術基盤を獲得できた。今後は、技術の活用による課題解決の段階に入り、宇宙から付加価値のある技術を社会に広く提供していく。具体的には、宇宙基本計画(2013年1月)で示された「安全保障・防災」「産業振興」「宇宙科学等のフロンティア」の三つの重点課題に取り組む。
安全保障・防災への貢献の例としては、超低高度衛星技術試験機による高分解能の確保や衛星のコンステレーション化(複数衛星の利用)が挙げられる。また、新型基幹ロケットの開発により、抜本的なコストダウンや将来技術の獲得を目指す。
産業振興に向けては、商用衛星の製造と販売、衛星から取得した画像等の情報の販売、宇宙と他の分野の連携による衛星からの情報活用による新事業の三つが挙げられる。JAXAが今年3月に「新事業促進室」を設置したところ、企業からは、さまざまな相談が寄せられており、産業界の意見を聞きながら、産業振興に取り組んでいきたい。宇宙科学技術の応用例としては、次世代赤外線天文衛星の活用がある。
JAXAでは、13年度に4機の衛星を打ち上げる予定である。13年度のJAXAの予算は1625億円であるが、米国のNASA(米国航空宇宙局)が約1.7兆円、欧州宇宙機関(ESA)が5481億円であるのに比べて非常に少ない。わが国の宇宙関係予算が伸びにくいなかで、JAXAとしては三つの重点課題で成果を出すことに注力していきたい。
■ 意見交換
意見交換では、大宮副委員長から、「次期基幹ロケットの開発への着手が決まったが、今後ロケットの仕様を決めるにあたり、三つの重点課題との関係についてどう考えるか」と質問したところ、奥村理事長が「ロケットは、三つの重点課題に加えて、国民に感動を与えるといった重要な要素を持っている。ロケットの打ち上げの確実性や寿命などの重要性についても理解すべきである」と答えた。
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総会終了後、懇親会が開催され、宇宙開発利用推進委員会のメンバー、左藤章防衛大臣政務官、政府関係者、有識者など約150名が参加した。
【産業技術本部】