経団連は7月11日、福岡市内のホテルで「国際観光シンポジウム2013 in 九州」を開催した。観光立国の実現のカギとなる国際観光交流の拡大に向け、わが国にとって極めて重要な市場である韓国との交流拡大を図り、拡大するアジアの旅行市場のなかでの日韓両国の戦略と連携の可能性を探ることが目的。
シンポジウムの開催にあたっては、2011年の東日本大震災以降、特に韓国からの観光客数の回復が遅れていたことから、九州経済連合会、九州観光推進機構と共に、韓国の全国経済人聯合会の協力のもと、韓国からの観光客の受け入れに力を入れている九州を舞台として設定。また、地元の福岡県、福岡市、九州運輸局のほか、観光庁、日本政府観光局、日本観光振興協会、日本旅行業協会、全国旅行業協会、経済広報センターが後援、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス、九州旅客鉄道、JTB九州が協賛し、国・地方を挙げた日韓観光交流の機運を盛り上げた。
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開会あいさつに立った大塚陸毅経団連副会長・観光委員長は、「わが国が本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎えるなかで、国際観光振興による交流人口の拡大は、これからの日本経済の成長のカギ」と指摘するとともに、日韓の観光関係の課題として、(1)日韓両国の観光交流、さらには中国を入れた日中韓の観光交流の拡大(2)増大する世界の海外旅行市場、とりわけ成長著しいアジア地域のマーケットの取り込みに向けた日韓両国の連携(3)自国の地域活性化への観光の活用――を挙げた。
来賓あいさつでは、観光庁の井手憲文長官が、6月11日に観光立国推進閣僚会議で策定したアクション・プログラムのもと、今年は訪日外国人1000万人を目指していることを報告するとともに、昨年は韓国からの訪日客が伸び悩んだなか、韓国の観光関係者に助けられたことを紹介。日本側も韓国への送客に力を入れ、双方向の交流を強化していく決意を示した。
また、朴三求全国経済人聯合会副会長・観光産業委員長は、日韓両国が連携してアジアの観光先進地域を創造していくために、(1)日韓海底トンネルの建設(2)日中韓での観光ビザ免除の実現(3)アジアレールパス構想の推進(4)日韓両国の意見交換の活性化――という四つの課題に取り組むことが重要と述べた。
シンポジウムでは、日韓観光交流の拡大に向けた取り組みとして、日本側から、日本政府観光局、日本観光振興協会、日本旅行業協会、九州観光推進機構、福岡市の幹部が、観光関係者同士の交流や韓国の済州島をモデルとした九州オルレと称するトレッキングコースの整備、釜山市と福岡市を結ぶ観光圏づくりなどを紹介した。
続いて韓国側から、済州道、韓国観光協会中央会、ハナツアー、韓国観光公社の幹部が、政治問題や災害を乗り越えて観光交流を拡大するための方策として、免税措置の拡大や通信環境の整備、健康志向など市場のトレンドをとらえた商品創造の重要性などを説明した。
最後に、石原進九州経済連合会副会長・観光委員長・九州観光推進機構会長が閉会のあいさつで、日韓両国が政治問題など厳しい状況を乗り越えてウィン・ウィンの関係を築くためにも、観光を通じた人と人との交流が重要と述べ、今回のシンポジウムを契機に日韓観光交流の拡大を進める旨を表明し締めくくった。
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なお、同シンポジウムでは、関連行事として日韓双方の主要参加者による懇談会や九州オルレの有名なコースである武雄オルレ等の共同視察を実施、懇談会には、小川洋福岡県知事、高島宗一郎福岡市長も参加した。
【産業政策本部】