経団連(米倉弘昌会長)は7月11日から21日にかけて、ヨーロッパ地域委員会の横山進一共同委員長および小林喜光共同委員長を団長とする総勢24名のミッションを、ポルトガルならびにバルト3国に派遣した。訪問各国における懇談の概要は次のとおり。
■ ポルトガル=長い友好の歴史を基盤に日本とのさらなる経済関係強化に期待
2011年春、財政破綻を回避すべくトロイカ(欧州中央銀行、欧州連合、国際通貨基金)へ支援を要請したポルトガルは、その後、財政再建を着実に履行し、対外的には優等生との評価を得るも、国民の間では痛みを伴う財政再建の継続に不満が高まっている。7月初旬には閣僚人事をめぐり政治的混乱が生じるなど難しい状況であるにもかかわらず、カヴァコ・シルヴァ大統領はじめ政府首脳がミッション一行との会談に応じた。一連の会談からは、日本との関係強化に寄せるポルトガル側の熱意が感じられた。
日本とポルトガルの間には交流470周年という長い友好の歴史があるが、貿易・投資は小規模な水準にとどまっている。今後、経済交流の拡大に向けて、ポルトガルが強みを持つアフリカやラテンアメリカ等の第三国市場における産業協力に強い期待が示された。経団連側からは、今年4月に交渉が開始された日EU EPAの早期実現を働きかけるとともに、企業活動を支える法的な基盤整備の一環として、駐在員の社会保険料の二重払い等を防止するための社会保障協定をポルトガルと締結するよう日本政府に働きかけていることを紹介した。
■ バルト3国=「欧州の一員」として日本との経済関係構築に意欲
3カ国ともリーマンショック後の経済危機から急速に立ち直り、高い経済成長を実現、堅実な財政を維持している。「旧ソビエト連邦」から完全な「欧州の一員」に移行すべく努力を継続しており、日本との経済関係拡大への期待は強い。
エストニアは、すでにユーロ導入とOECD加盟を実現するなどバルト3国のなかのトップランナー的存在。またIT立国としても有名である。8年にわたり政権を率いるアンシプ首相からは、電気自動車の導入や急速充電網の設置等における日本企業との協力事例や、EUやロシア・CIS市場へのゲートウェイ等、同国の優れたビジネス環境について説明を受けた。
リトアニアでは、グリボウスカイテ大統領から、今期のEU議長国として日EU EPAの早期実現に尽力するとの発言があった。同国には日本企業が関与する新たな原子力発電所建設の計画があり、大統領はこれを契機に日本との関係強化につなげたい意向だが、昨秋の国民投票の結果、建設計画への反対が6割に達したことを受け、現政権は作業部会を設置して検討中である。
ラトビアは世界的な経済危機により、一時は国家倒産寸前に追い込まれながら、構造改革、緊縮政策の断行により危機を克服し、ユーロ導入、OECD加盟手続きの開始を決定するなど、今後の見通しには明るい要素が並ぶ。ベルズィンシュ大統領からは、北欧地域における同国の地理的優位性を活かし、運輸・物流分野での日本との関係構築への期待が表明された。
【国際経済本部】