経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で、経団連・アジア開発銀行(ADB)共催ミャンマー・セミナーを開催し、玉置知己アジア開発銀行駐日代表、岩崎秀明東南アジア局主席インフラ専門官、ロナルド・ブティオン南アジア局主席地域協力専門官から、改革が進むミャンマーの現状と展望、経済統合への期待などについて説明を聞いた。開会あいさつでは、安部慎太郎日本ミャンマー経済委員会ビジネス環境整備推進部会長が、民主化の進むミャンマーの経済開発におけるADBの役割に期待を表明した。説明の概要は次のとおり。
■ 経済改革が進むミャンマーに対するADBの視点
ADBは、1973年のミャンマーの同行加盟後、86年までに30数件に対し総額5億ドルに上る支援を実施したが、その後の政治情勢の変化により、同国を含む複数国への地域協力を除き疎遠になっていた。民政移管の後、2012年に通常活動を再開し、暫定パートナーシップ戦略(ICPS)と呼ばれる計画を策定している。すでに運輸、エネルギー、農業、教育等に関する同国のニーズを評価し、発展の道筋を助言している。
■ ミャンマーの経済・投資環境の現状と展望およびADBの取り組み
ミャンマーの利点は、改革への強い意思、若年層の多い人口構成、土地・水・天然ガス・鉱物等の豊富な資源、観光資源等が挙げられる。また、成長するアジアの巨大市場に隣接していること、これまで外部との接触が少なかったために幅広い投資可能分野が残っていることから、ビジネスチャンスが大きい。再生可能エネルギーの利用可能性も大きい。
一方、成長の制約としては、懸念されたほどではないものの不安の残るマクロ経済運営、弱い財政基盤、未発達の金融セクター、貧弱なインフラ、識字率は高いものの産業構造の変化に対応するには不十分な教育の質、特定分野に依存する輸出等が挙げられる。また、政治情勢による改革・自由化の停滞、経済活動の拡大による環境への負荷、民族間紛争、08年のサイクロン・ナルギスに見られるような気候変動の影響等のリスクがある。
ただし、改革志向の強い大統領府を中心とする行政府のメッセージは国内で広く支持されており、市民団体の活動も活発である。現在、昨年末の大統領スピーチでも言及された汚職撲滅が声高に叫ばれており、動向を注視している。13年は行動の年とされており、ADBとしても技術支援から融資案件に早く移行したい。
■ ミャンマーがもたらす南アジア経済圏と東南アジア経済圏の一体化
南アジアと東南アジアの統合メリットは、モノやサービスの市場拡大、競争の促進、生産ネットワークの拡大、海外直接投資の増加による技術移転の進展、域内の経済回廊の延伸・強化である。また、両地域の協力が進めば「平和の配当」もあろう。
われわれはミャンマーをGame Changerと呼んでいる。それは、急成長を遂げる中国、インドの間にあり、域内協力に積極的に関与していることに加え、開国により運輸・エネルギー分野での潜在的な成長力も高まっているからである。
<懇談>
日本政府との連携についての質問に対して、援助機関の連携・調整の場として国家計画経済開発省の下にセクター別ワーキンググループの設置が進められており、ミャンマーにおいては、国際協力機構(JICA)、日本大使館との情報交換を頻繁に行っているとの回答があった。
【国際協力本部】