経団連は5月27日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会(井手明彦委員長)を開催した。当日は、資源エネルギー庁の高原一郎長官から、エネルギー政策をめぐる最近の動向について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 2013年度夏季の電力需給
現在、国内の原子力発電所全50基のうち、48基が停止している。これにより、わが国では電力の供給不安が生じている。
2013年度夏季の電力需給は、10年度夏季並みの猛暑となるリスクや直近の経済成長の伸び、企業や家庭における節電などを織り込んだうえで、いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低限必要とされる予備率(3%以上)を確保できる見通しである。しかし、老朽化した火力発電の脱落等が発生した場合には、電力需給が逼迫する可能性がある。
そこで、政府として、電力需要家に対し数値目標のない節電を要請するとともに、自家発電の活用などの対策を講じることとした。
他方、原子力発電の稼働停止に伴う火力発電の焚き増しにより、追加的な燃料費(12年度は3.1兆円、13年度は3.8兆円と推計)が発生している。これが、発電コストの上昇や、貿易赤字の拡大(12年度実績は8.2兆円の赤字)につながっている。
■ 原子力発電所の再稼働
原子力発電所にかかる新しい安全基準は、7月18日までに公布・施行される。原子力規制委員会は、これに基づいて、原子力発電所の安全審査を行うこととなる。
今後、原子力規制委員会が安全だと認めた原子力発電所は稼働させる。その際、地元への説明は、事業者まかせにせず、政府も前面に立って行う。
■ エネルギー基本計画の策定
新しいエネルギー基本計画の取りまとめに向け、今年3月、総合資源エネルギー調査会総合部会において検討を開始した。現在、(1)生産(調達)段階(2)流通段階(3)消費段階――に分けて議論を行っているところであり、年内に新しいエネルギー基本計画を取りまとめる予定である。
取りまとめにあたっては、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築することが必要である。
なお、原子力発電所の稼働や再生可能エネルギーの導入などのさまざまな要素を検討し、責任ある数字を出すのは時間がかかる。エネルギー基本計画では、エネルギーのベストミックスありきではなく、中長期を見据えた政策の軸や方向性、具体的な施策を示していく。
■ 電力システム改革
電力システム改革については、第1段階として広域的運営推進機関の設立(15年を目途に設立)、第2段階として小売・発電の全面自由化(16年を目途に実施)、第3段階として法的分離による送配電部門の中立化(18~20年を目途に実施)を行う。
今国会に提出した電気事業法改正案では、第1段階の改正を行うとともに、第2段階、第3段階にかかる措置を段階的に実施していく旨のプログラム規定を附則において措置した。
【環境本部】