経団連は4月22日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会国際労働部会を開催し、劉新宇・中国弁護士から「中国労務管理の最新動向・実務上の注意点」と題する講演を聞いた。概要は次のとおり。
■ 最近の労働問題の傾向
劉氏は、中国における最近の労働問題の傾向として2009年以降、労働紛争が若干減少傾向にあることに言及し、その主な理由として、08年施行の「労働契約法」のインパクトが徐々に低下してきていること、企業の雇用管理制度がある程度規範化されつつあること、労働者の法律に対する意識が向上していること、調停が有効に紛争解決に機能していることなどをあげた。
一方、紛争内容がこれまでの労働契約解除に関するものから、給与の支払いや社会保険料の支払い、労災補償などをめぐるものへと複雑化し、また、紛争も集団化する傾向にあること、さらには発生時期も多様化し、また、在職従業員による提訴などが増加していることなどの実態を紹介した。
■ 労働者派遣の新規定
今年7月に施行が予定されている労働契約法の改正に関しては、特に労働者派遣に関する規制強化が重要なポイントであると指摘。その背景として、現在中国国内には、労働者総数の13.1%を占める約3700万人の派遣労働者がおり、とりわけ、第三次産業において派遣労働者が急増していることを紹介した。
このようななか、派遣会社の乱立、規範に合わない経営、国有企業等が派遣労働者を大量かつ長期的に雇用する実態があり、就業差別の深刻化や「同一労働同一賃金」原則への違反、労働条件・賃金の低下、労働組合への加入が進んでいないことなど、労働者派遣を取り巻く環境に深刻な問題が存在しており、今回の法改正はこれらの問題への対応を踏まえたものであることを説明。(1)派遣会社の設立要件がこれまでの登録制から行政の許認可制に引き上げられるとともに最低登録資本金が50万人民元から200万人民元に引き上げられること(2)「同一労働同一賃金」の明確化が図られること(3)労働者派遣の活用について事由等が制限されること――など改正の具体的な内容を紹介した。
■ 労働者派遣活用の事由等の制限
このうち、特に労働者派遣の活用の規制については、適用範囲として臨時的(派遣継続期間が6カ月以内)、補助的(主要な業務の職位のためにサービス提供する主要でない業務の職位)、代替的(派遣先の労働者の就学や休暇などの間の代替職位)な職務に限定されること、さらに、社内の労働者総数に対する一定比率(業種ごとに規定)を超えて派遣労働を活用できなくなることとなり、施行後には細心の注意が必要である点を強調した。
■ 実務上の注意点
劉氏は、在中外資系企業の実務上の注意点として、法改正に伴う点検・調整ポイントの整理、雇用形態の把握と選択、労働者派遣に関するコンプライアンス上の問題や、派遣契約の内容の確認、派遣契約の解除などを含む会社との折衝時の注意点、派遣労働者の管理体制の構築などを紹介した。
【国際協力本部】