経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)は4月24日、東京・大手町の経団連会館でアンヘル・グリアOECD事務総長との懇談会を開催した。それに先立ち、グリア事務総長は米倉会長と会談した。
懇談会におけるグリア事務総長の発言要旨は次のとおり。
■ 世界経済は改善傾向に
米国は住宅部門や労働部門の回復を背景に経済が好転しつつあり、今年は2~2.5%、来年は3%の成長が見込まれる。
欧州では今年上半期も景気後退が継続、国別に見るとイタリアは悪化、フランスは横這い、ドイツはかろうじてプラス成長となっている。失業率も高く、米国の8%に対してユーロ圏では12%超である。米欧とも失業が長期化傾向にある。OECD加盟国では若年層の失業率が全世代の2~3倍に達するなど、低成長と若年層の高失業率により格差が拡大している。
他方、新興国経済は好転しつつあり、OECDでは2013年の経済成長率を中国8.5%、インド6.5%、ブラジル3.5%、メキシコ4%と見込んでいる。
日本は、今年、来年とも1.5%成長となる見込みである。
■ アベノミクスを支持
日本経済は15年にわたるデフレ、急速な高齢化、労働市場の縮小、低い労働生産性等の諸課題に直面している。こうしたなか、アベノミクスにより楽観的な希望が生まれたことは喜ばしく、これを支持しているが、取り組みはまだ始まったばかりである。大胆な金融緩和に加え短期間の財政出動は必要だが、対GDP比220%の公的債務残高の解決には、債務の伸び率を安定化したうえで、これを減らす道筋を示す必要がある。競争力強化に向けてカギを握るのは第三の矢の成長戦略である。
■ 日本の競争力強化のための政策を提言
今般OECDが公表した対日審査報告書より、主要4分野に関する政策提言を紹介したい。
第1はグローバルバリューチェーンへの関与強化。国を開き対日投資を受け入れることで、日本の競争力強化につながる。その観点から日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加表明、日EUEPA交渉開始を大いに歓迎する。
第2は農政改革。日本の農家の収入の50%以上は公的助成によるが、OECD平均は20%である。担い手の高齢化も深刻である。しかし、稲作を除けば日本農業には活力があり、野菜、花、果物等は助成に頼らず高収益をあげている。競争力強化に向けて、農地の集約、生産調整制度の段階的な廃止等を進める必要がある。
第3は開かれた研究開発の推進。日本の研究開発投資額は大きいが、生産性が低く投資に見合うリターンを得られていない。閉鎖的な体制を見直し、海外との共同研究や海外からの研究開発投資を増やす必要がある。
第4はICTイノベーションの利活用。人口過疎地が多く高齢化が進む日本では、人材不足補完のためにも、ICTイノベーションをさらに活用すべきである。
なお、人材不足への対応としては女性、高齢者、若者を含む人的資源を最大限活用する必要があるが、生産性と経済成長を保つには移民政策の検討が不可避であろう。
【国際経済本部】