経団連は14日、「防衛計画の大綱に向けた提言」を公表した。提言は今年初めの「イタリアおよびイギリスの防衛産業政策に関する調査ミッション」などの成果を踏まえ、年末に政府が策定する防衛計画の大綱に産業界の意見を反映させるため取りまとめたものである。概要は次のとおり。
■ 防衛産業の現状
欧米では、防衛予算の減少に対して、防衛産業の再編と積極的な海外展開、装備品の国際共同開発・生産を推進している。
一方、わが国では、防衛予算の減少の結果、一部の企業で事業の縮小や撤退が進んでいるが、欧米のような企業再編は進んでいない。そこで、わが国の実情に即した防衛生産・技術基盤を維持する方策が求められる。
■ 防衛産業政策のあり方
防衛生産・技術基盤戦略の策定
国内に維持すべき重要分野の明確化と財政的な裏付けの確保、研究開発費の増額が求められる。国際共同開発・生産の推進
武器輸出三原則等により武器輸出および武器技術供与は実質的に全面禁止とされ、わが国は装備品の国際共同開発・生産に参加できなかったが、2011年12月に包括的な例外化措置が講じられ、今年3月には戦闘機F-35製造への日本企業の参画が例外とされた。
今後は、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、スウェーデン、EU、NATOといった欧州諸国や国際機関との協力の推進が求められる。
また、国際共同開発・生産を(A)政府間共同開発・生産、(B)産業レベルの共同研究、(C)一方の政府プログラムへの参加、(D)ライセンス供与国への部品供給の四つに分類し、それらを実施できるよう、政府間の覚書(MOU)の締結、目的外使用や第三国移転に関する適切な管理体制の整備などが求められる。取得・調達政策の改善
長期契約等の活用による安定的な官民のパートナーシップを構築し、事業の安定的継続やwin-winの関係を実現する必要がある。
■ 宇宙開発利用およびサイバー攻撃対処の推進
安全保障の確保における新たな領域として宇宙開発利用およびサイバー攻撃への対処が重要である。
■ 防衛計画の大綱への期待
防衛計画の大綱で防衛産業の意義を明確化し、防衛生産・技術基盤戦略の基本方針を策定すべきである。そのうえで重要分野の維持・強化、国際共同開発・生産の推進、契約面での公平なリスク負担の実現が求められる。
こうした各種環境整備により、防衛産業の将来展望が明確化されれば、産業界としても自主的な研究開発やコストダウン、産業組織の変革・再編等も検討し、国際競争力の強化に努める。
【産業技術本部】