経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で、道州制推進委員会企画部会(神尾隆部会長)を開催し、辻琢也・一橋大学大学院法学研究科教授から、高齢化社会における都道府県改革と道州制について説明を聞いた。
■ 都道府県改革の必要性
都道府県改革が必要とされる要因は3点ある。第一に、高齢化の進行に伴う人口減少と三大都市圏への相対的な人口集中である。日本は過去100年間、総じて人口拡大期にあったが、2004年の1億2784万人をピークに減少に転じ、2050年には9515万人まで減少すると推計されている。翻って、65歳以上の高齢人口はこの間19.6%から39.6%にまで増加すると見込まれる。その結果地方圏では、人口が現在の65%程度にまで落ち込み、人口の約半分が高齢者になる県が珍しくなくなる。
第二に、財政逼迫の進行である。一定水準の財政力を超える普通地方交付税の不交付団体は、全都道府県のうち東京都のみである。都道府県における財政逼迫の原因は、歳入面での法人二税の伸び悩みが大きく、高齢化と人口減少の進行に伴い、さらなる悪化が想定される。
第三に、総支出に占める人件費等の比率の高さである。現在、各都道府県の歳出の3割程度を人件費が占めている。都道府県においては、定員削減を含めた財政再建に努力しているものの、人件費比率が高止まりしている状況にある。
■ 都道府県改革の二つの方向性
現在、検討されている都道府県改革の方向性は二つある。第一は、道州制の導入である。その最大の特徴は、国としての大規模な行財政改革を伴う点である。現行の都道府県に加え、国の支分部局の廃止、市町村合併が伴えば、行政における無駄を排することができるのみならず、行政サービスに関する意思決定の簡素化・迅速化が期待できる。他方、国主導の産業政策や国土政策の弱体化、政治的な困難等が懸念される。
第二は、現行の道府県に市町村の一部の役割を代行させ、現場業務に従事させることである。現在でも、広域自治体が上下水道や道路、消防、公営バス事業、港湾管理等の業務を担っているケースがあり、道州制に比べれば現実的な改革論であると考えられる。しかしながら、道州制に比して、その効果も限定的になると言わざるを得ない。
■ 経済界への期待
日本が直面する状況に鑑みれば、前述のいずれかの改革の選択が迫られる。地道に実効性を高めていく努力が不可欠ではあるが、都道府県改革を進めるためには、当事者である国と地方のみでは議論に限界がある。経済界にも、超高齢社会を乗り越える自治制度の構築に向けて、強いリーダーシップの発揮を期待したい。
【産業政策本部】