経団連の国民生活委員会(川合正矩共同委員長、木村惠司共同委員長)は12日、東京・大手町の経団連会館で「新型インフルエンザ等対策特別措置法(2012年5月公布)」の施行に向け、今年2月に公表された「新型インフルエンザ等対策有識者会議『中間とりまとめ』」(以下「中間とりまとめ」)について、国立病院機構三重病院院長の庵原俊昭氏および、内閣官房新型インフルエンザ等対策室から説明を受けた。
はじめに庵原氏から、「インフルエンザの感染力は、麻疹や風疹といった感染症と比較すると弱く、密接な接触を避けることで、感染拡大を抑えることができる」「歴史上いわゆる新型インフルエンザウイルスは主にブタを介してヒトに感染する。これまでの研究では、H5N1亜型ウイルスをニワトリの高病原性に変異させるのはニワトリのヒナだけであること、また、トリ型のH5N1ウイルスを豚に感染させてもヒト型に変異しないことがわかっており、自然界で高病原性のヒト型H5N1ウイルスが発生する可能性は低いといえる。ただし、危機管理としてさまざまな事態に対応できるよう対策を講ずる必要がある」との説明があった。
続いて、内閣官房から同法に基づく対策推進のスケジュールとあわせ、「中間とりまとめ」のうち、事業者にかかわる部分について説明があった。このなかで、「事業者の講じるべき対策は、三つに分類される。まず、指定公共機関は政府対策本部の講ずる対策の一翼を担うことになり、業務計画を策定いただく。次に、発生時に業務の継続が求められる登録事業者は自身で接種体制を整備するとともに、BCP(事業継続計画)を策定する。最後にそれ以外の一般事業者は職場での感染防止策の徹底等、できる範囲での対応をいただく。こうしたかたちで事業者全体としての対策を講じていただくことになる」との考え方が示された。
■ 意見交換
続いて行われた意見交換では、「風評被害防止に向けた正しい情報提供体制を構築すべきであり、誤った情報は速やかに修正することが重要である」との意見に対し、内閣官房からは、「実被害同様に風評被害のリスクは非常に高く、平時からマスコミやインターネットを活用し正しい情報を提供するよう努めていく」との見解が示された。
また、「政府の示した被害想定よりも毒性の強い感染症についても備えておくべきか」との質問に対しては、庵原氏から、「現在、ある程度以上の感染力があって、致命率が一番高い感染症は麻疹であるが、先進国での致命率は0.2%である。現在の日本の医療・衛生レベルを考えると、今回の被害想定の基となっている致命率2%は非常に高い数値であり、それより致命率の高い感染症が発生する可能性は低いのではないか」との考えが示された。
また、「パンデミック時には、提供できるサービス水準が低下することは避けられないが、この点、国民に周知いただきたい」「パンデミック時における各種法令の弾力運用の検討については、今後どのようになされるのか」との発言に対しては、内閣官房から、「有識者会議でもサービス水準の国民への理解に努めるべきとの意見が出され、その旨『中間とりまとめ』に記載している。また、法令の弾力運用については、経済界と今後も協議していきたい」との回答があった。
【経済政策本部】