経団連は2月25日、東京・大手町の経団連会館で、ジェームズ・コノ―トン前米国大統領府環境評議会議長を招いて懇談会を開催した。当日は、ブッシュ政権下でAPP(アジア太平洋パートナーシップ)やMEM(エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国会合)等の設立に向けて主導的な役割を果たしたコノートン前議長から、「実践的かつ現実的な気候変動対応の課題」について説明を聞き意見交換を行った。コノートン前議長の説明は次のとおり。
◆ エネルギー・気候変動をめぐる米国内の情勢
米国では、シェールガス革命が温室効果ガスの排出量に大きく影響を与えている。経済成長の鈍化により、運輸部門の燃料需要が落ち込み、電力需要も伸びていないという事情もあるが、シェールガス革命によって石炭の割合が減少し、ガスの割合が急増している影響の方が大きい。また、シェールガス革命によって電力価格も大きく下がり、消費者は1千億ドルの恩恵を受けている。
米国では、発電所の大気汚染、自動車の燃料効率、再生可能エネルギー、照明効率、家電製品の熱効率、オゾン層の破壊などに関する規制が行われている。仮に全国的な排出権取引制度を導入すれば、既存の取り組みがうまくいかなくなる。また、炭素税に関しても、例えば1トン当たり20ドルで導入すると、電力価格は11%上昇することとなる。現在の政治情勢を考慮すれば、大きな負担を伴うような制度が導入されることはないだろう。
米国の排出量は2005年をピークとして減少に転じている。将来の排出量も従来は大きく増加すると予測されていたが、今では現状維持もしくは減少すると予測されている。これには、政府の規制よりも、市場動向の変化が大きく影響しているといえる。
◆ 実践的な国際協力を進めるために
温室効果ガスの排出量が全世界の排出量の1%を超える国は20しかないが、国連交渉には190余りの国と地域が参加し、ほとんど内容が変わることがない文言をめぐって際限のない交渉を行っている。こうした動きとは別に、実質的な議論を進めることが求められており、日米の産業界が主導的な役割を果たしているBizMEF(エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国ビジネスフォーラム)のような取り組みが重要である。
なお、1987年に採択されたオゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書は、長期の目標を目指したボトムアップ型の枠組みで、途上国も責任あるかたちで参加しており、民間セクターも大きく関与している。気候変動交渉には、同議定書を参考にできる点が多くある。
【環境本部】