経団連(米倉弘昌会長)は1日、都内で麻生太郎財務大臣との懇談会を開催した。財務省からは麻生大臣のほか、山口俊一副大臣、小渕優子副大臣、竹内譲大臣政務官、伊東良孝大臣政務官らが、経団連からは米倉会長、渡文明審議員会議長をはじめ、副会長、審議員会副議長らが出席した。
麻生財務相「3本の矢」でデフレ不況脱却
冒頭、米倉会長は、安倍政権の発足以来、経済再生とデフレからの早期脱却に向けた「15カ月予算」の策定や日銀との連携強化といったスピーディーな政策対応について謝意を示した。そのうえで今後、政治の強いリーダーシップの下、成長戦略の早期実行、消費税率の着実な引き上げ、TPPなど経済連携協定の推進が求められると指摘した。
続いて麻生大臣からは、「デフレ下の不況は、第2次世界大戦以降、世界でも日本だけの経験であり、1930年代の高橋是清やフランクリン・ルーズベルトといった先人に学ぶことが重要である。われわれは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を『3本の矢』として、同時に実行することでデフレ不況から脱却できると確信している」「経済界、特に業績の上がっている企業には、一時金などのかたちを含め、報酬の引き上げについて検討いただきたい」との発言があった。
■ 懇談
続く懇談では、米倉会長から、「総理官邸での意見交換会(2月12日)において、安倍総理からも賃金引き上げの要請を受けたが、そこでも申し上げたとおり、企業収益が本格回復に向かえば、まずは賞与・一時金、さらに将来の成長見込みが確かなものとなれば、本格的な雇用の増大や賃金の上昇につながっていくと思われる」「総理からの要請は、経団連の会合や機関紙である経団連タイムスを通じて、会員企業に周知している」との発言があった。
続いて経団連側から、(1)経済再生に向けた取り組み(小島順彦副会長)、(2)財政再建に向けた取り組み(石原邦夫副会長)、(3)税制改革の推進(渡辺捷昭副会長)、(4)TPPをはじめとする経済連携協定の推進(勝俣宣夫副会長)――の4点について発言があった。
これらの発言を受け麻生大臣は、一点目の経済再生に向けた取り組みに関し、規制改革は成長戦略の柱として安倍総理も力を入れており、医療をはじめとするテーマについて、規制改革会議において議論していくと述べた。また、エネルギーについて、安価で質の高い電力が企業活動の前提条件であると、理解を示した。
二点目の財政再建への取り組みについて、平成25年度予算は、成長力強化につながる施策等に重点配分する一方、生活保護や公務員給与の適正化を図った結果、4年ぶりに税収が公債金を上回ったことを強調した。
三点目の税制改革について、平成25年度税制改正では、研究開発促進税制の拡充や設備投資促進税制の創設などを講じており、企業にやる気を持ってもらうことで、実際の投資につながることへの期待を表明した。消費税率の引き上げに向けては、景気対策を着実に行い、不況に陥らないよう努めたいと述べた。
四点目の経済連携に関し、特にTPPについて、メリット・デメリットを示すなど国民の理解を深めつつ、国家の繁栄に向け、国益を最大限高めることを目指して対応したいとの決意を示した。
また、山口副大臣は、社会保障費の増加と国民負担の増加の「いたちごっこ」を避けるために、社会保障費の伸びを抑制するべく、給付の重点化・効率化に取り組むことを強調した。小渕副大臣は、法人実効税率の引き下げや地方法人特別税の取り扱いについては、税制抜本改革法に示された方針に沿って検討すると述べた。
【経済政策本部】