21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は7日、東京・大手町の経団連会館で第94回シンポジウム「国際租税をめぐる世界的動向―OECD、BIACの取り組み」を開催した。
シンポジウムではまず、ウィリアム・モリス・BIAC(OECD加盟国の経済団体により構成されるOECDの諮問機関)税制・財政委員会委員長が「国際税務に係る諸問題とBIACの活動」と題して基調講演を行い、最近の税制に関するBIACの取り組みを紹介するとともに、(1)予見可能な安定した租税政策が必要(2)政府の視点だけではなく、経済の視点が重要であり、企業も積極的に企業活動のなかで生じた問題等を政府当局に伝えることが重要――と指摘した。
次に、安井欧貴・OECD租税政策・税務行政センター移転価格部門アドバイザーが「移転価格上の無形資産の取り扱い」と題して、2012年6月に公表された「OECD移転価格ガイドライン第6章(無形資産)改定のためのディスカッション・ドラフト」の論点に関する整理や今後の予定について説明を行った。
その後、国内の研究者、企業関係者に加えて、OECD、BIACの税制担当幹部を交え、二部構成でパネルディスカッションが行われた。
第一部「PE課税をめぐる国際税務諸問題」では、21世紀政策研究所研究主幹の青山慶二・早稲田大学大学院会計研究科教授をモデレーターに、活発な議論が展開された。萩谷淳一・三井物産経理部税務統括室次長はインド・中国におけるPE課税問題を紹介し、モリス氏、クリスター・アンダーソン・BIAC税制・財政委員会副委員長、アーチ・パーネル同副委員長の3氏は、「OECDモデル租税条約5条」の改定状況および課題についてそれぞれの見解を述べた。また、一高龍司・関西学院大学法学部教授はOECDモデル租税条約の新7条に呼応した国内法改正状況および課題について説明し、青山研究主幹は国連モデル条約について説明を行った。
第二部「無形資産に係る移転価格課税をめぐる諸問題」では、岡田至康・プライスウォーターハウスクーパース顧問をモデレーターに活発な議論が展開。モリス氏、菖蒲静夫・キヤノン財務経理統括センター税務担当部長が、「OECD移転価格ガイドライン第6章改定案」についてそれぞれの見解と課題、要望を述べた。アンダーソン氏、槇祐治・トヨタ自動車経理部国際税務・株式担当主査は、無形資産にかかる移転価格の実務的課題をそれぞれ具体的に述べ、安井氏は無形資産にかかる課税をめぐる米国の動きを説明。岡田氏は国連の移転価格マニュアルについて説明した。
シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。
【21世紀政策研究所】