経団連事業サービスは1月28、29の両日、第116回経団連労使フォーラムを開催した。2日目には企業労務担当役員、産別労組リーダーの講演「今次労使交渉に臨む方針」が行われた。
概要は次のとおり。
企業労務担当役員
■ 宮崎直樹・トヨタ自動車常務役員
トヨタ自動車の宮崎氏は、春季労使交渉を1年間の労使関係の総決算の場とし、労使が抱える課題について認識を合わせ、徹底的に協議したいと説明した。
賃金については、経済状況や賃金引き上げが国際競争力に与える影響等を十分考慮し判断したい、賞与については、業績をベースに組合員の頑張り、グループ各社に与える影響等も考慮し決めたいと述べた。あわせて、日本にモノづくりを残していくためには、人材の国際競争力の向上が重要との観点から、一人ひとりの働き方の変革を推進していきたいとの考えを示した。
■ 御手洗尚樹・日立製作所人財統括本部長兼総務本部長執行役常務
日立製作所の御手洗氏は、電機産業を取り巻く環境が厳しいなか、グローバル事業での成長を目指し、グローバル人財マネジメントへ移行を図っていくとの方針を示した。
今次交渉では、(1)グローバル市場・競争を踏まえた賃金制度の仕組み・あり方(2)短期業績に対する成果配分を基本としつつ、従業員のエンゲージメントを高める施策(3)制度、仕組みの標準化をはじめ事業の成長へ向けた労使共通認識の構築――について、協議を継続していくと述べた。
■ 杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス取締役常務執行役員経営戦略本部長
三越伊勢丹ホールディングスの杉江氏は、百貨店業界を取り巻く、(1)業態の多様化(2)消費者の価値観・購買行動の変化――にいかに対応していくかが重要と説明した。
そのうえで、労使による通年協議を通じて、従業員の持てる力を最大限に引き出すための人事制度として、役割成果主義による人事制度の設計を行ってきたことを説明。専門性に基づく貢献度の高い従業員に対し、公平・最適に処遇する観点から、メリハリある仕組みとしていく方向で議論を続けていくと語った。
産別労組リーダー
■ 相原康伸・自動車総連会長
自動車総連の相原会長はまず、2013年の取り組みにおける重要な視点として「人への投資」を指摘。個々人の成長、労働の質の高まりをどれだけ評価してもらえるのかが重要と説明したうえで、2013年が「転換点」となるような協議をしたいと語った。
労使交渉の役割については、賃金、労働条件の課題を明確にし、それに対する手当てをいかにしていくかという、持久力が求められる取り組みに変化していると指摘。個別賃金の絶対水準を重視した取り組みを進めていくと語った。
■ 有野正治・電機連合中央執行委員長
電機連合の有野氏は、日本の現状について個別の労使交渉では解決できない大きな課題を抱えており、このことを労使で強く発信する必要があると指摘。労使が同じ思いで「生活不安」「雇用不安」「将来不安」を払拭することが重要と強調した。
具体的には、賃金体系維持、全体の底上げの観点からの産業別最低賃金、年齢別最低賃金の取り組みを重視するとした。高齢者雇用に関しては、エージフリー社会をいかにつくり出すかの議論のスタートにしたいと述べた。
■ 逢見直人・UAゼンセン会長
UIゼンセン同盟とサービス・流通連合の統合により結成されたUAゼンセンの逢見氏は、中小企業や非正規労働者が多く参加する組合として、賃金実態の把握、賃金制度整備の要求が不可欠と指摘。社会水準との格差を明確化したうえで、賃金体系が未整備な組合では、制度整備を要求するとの考え方を提示した。
具体的な要求としてはミニマム水準、すべての組合が到達を目指す到達水準、これを上回る場合は目標水準を部門ごとに設定するとした。
【経団連事業サービス】