経団連事業サービスは1月28、29の両日、東京・大手町の経団連会館で第116回経団連労使フォーラムを開催した。企業経営者や人事・労務担当者ら約260人が参加し、「企業を挙げて危機を克服する」をテーマに、国際競争に打ち勝つための経営戦略や人材戦略、春季労使交渉に向けての課題・対応策を探った。
冒頭、基調講演を行った米倉弘昌会長は、新たな投資と雇用の創出を喚起することで、経済の活性化、デフレからの早期脱却の必要性を指摘するとともに、積極的かつ戦略的にグローバル人材の育成に取り組むとした。今次労使交渉・協議においては、企業の持続的な成長と発展を労使共通の重要課題と位置付け、中長期的な視点に立って建設的な議論が行われることに期待を示した。
続いて三菱総合研究所政策・経済研究センター主席研究員の武田洋子氏が「2013年・日本経済の行方」と題して講演。日本経済は2%程度の成長を実現するものの、(1)中国経済(2)欧州債務危機(3)米国財政運営――の三つのリスク要因により影響を受ける可能性を指摘。日本の強みを活かして、課題の解決に取り組むことが重要と説明した。
「生き残りに向けた企業競争戦略」をテーマに日本郵船の宮原耕治会長、味の素の山口範雄会長、学習院大学経済学部の淺羽茂教授により行われた鼎談では、「グローバル化のためにはさまざまな変化や転換が必要。そのヒントが新興国市場にある」との考えが示された。
1日目の最後には連合の古賀伸明会長が「いま労働組合に求められるもの」をテーマに講演。「働くことを軸とする安心社会」の実現のため、人財の活用による付加価値の増大と成果の適正な分配を通じて成長を図る好循環へつなげていく必要があるとの考えを示した。
2日目はまず、企業の労務担当役員と産別労組リーダーが「今次労使交渉に臨む方針」について、それぞれ講演した。宮崎直樹・トヨタ自動車常務役員、御手洗尚樹・日立製作所人財統括本部長兼総務本部長執行役常務、杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス取締役常務執行役員経営戦略本部長の3氏は、環境変化を踏まえ労使の対話によって課題を解決していきたいと説明。一方、相原康伸・自動車総連会長、有野正治・電機連合中央執行委員長、逢見直人・UAゼンセン会長の3氏は、デフレ脱却には将来不安の解消が重要と指摘したうえで、人材育成や非正規労働者の処遇についても協議したいと述べた。
続いて「変革を実現するミドルマネジャーの育成と活用」をテーマに、大野和人・キヤノン執行役員人事本部長、連城明彦・アステラス総合教育研究所社長をパネリストに、守島基博・一橋大学大学院商学研究科教授のコーディネートのもとパネルディスカッションを実施。各社の事例を参考に、目指すべき方向性や課題について討議した。
特別講演「現下の国際情勢とわが国の課題」では、政策研究大学院大学教授・国際大学学長の北岡伸一氏が、世界情勢が変化するなか、日本がとるべき方策を示した。
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