経団連は1月23日、東京・大手町の経団連会館で林野庁の後援、フォレストック協会の協力のもと、「社有林の適切な管理と活用に向けたセミナー」を開催した。日本の国土の大部分を占める森林について、環境保全のための適切な管理や観光資源等としての積極的な活用が求められるなか、企業の自主的な取り組みを促すことが目的。企業・団体から役職員120名以上が参加した。
■ 重要度を増す社有林の管理と利用
開会あいさつで生江隆之・経団連観光委員会企画部会長は、「わが国が豊かな森林資源の活用に向けて政策の見直しを進めるなか、企業が所有する森林を適切に管理・活用していくことは、それぞれの企業経営の改善のみならず、地域活性化や国の成長、地球環境の改善にも有益であり、企業の社会的責任としてますます重要になっている」と指摘した。
■ 幅広い関係者の連携で地域活性化に貢献
続いて、来賓あいさつした沼田正俊・林野庁長官は、「わが国が木材を資源として有効活用するためには、さまざまな分野での需要拡大の取り組みを進めるとともに、森林施業の集約化・路網整備によるコストダウンと安定供給の実現が重要」と訴えた。また、「このセミナーにより社有林の潜在能力が開拓され、幅広い関係者の連携により具現化していくことで、地域経済の活性化に社有林が大きく貢献することを期待したい。林野庁としてもお手伝いする」と述べた。
■ 森林整備の効率化に向けた森林経営計画策定の促進
セミナーの前半では、効率的な施業と適切な保護を通じて森林の持つ多様な機能を十分に発揮させるため、改正森林法で定められた「森林経営計画」制度について、本郷浩二・林野庁森林整備部計画課長が説明した。本郷氏は、ストックの蓄積が進んでいるにもかかわらず、国内での需要に応じた利用ができていない日本の森林資源と木材供給の現状についてデータをもとに説明するとともに、「森林経営計画」等を通じて面的にまとまりのある森林経営を確立し、多様で健全な森林を育てていくことが、木材供給のみならず森林の多面的な機能の享受につながると強調した。
■ さまざまなかたちで森林の活用を進める企業
セミナーの後半では、業種も森林に関わる経緯も異なる、アサヒビール、大和ハウス工業、TDKラムダ、ワタミエコロジーの4社のパネリストによるパネルディスカッションが、竹内純子・フォレストック協会理事のコーディネートのもとで行われた。
パネリストは、それぞれが関わる森林の概況を説明後、地域の自治体や住民・NPO等と連携した森林整備や間伐材活用、学校等と連携した環境教育、社員ボランティアによる森林整備、社員研修における森林の活用等の事例を紹介。各社における工夫や苦労したこと、社有林活用の社内外での効果等について意見交換が行われた。
【産業政策本部】