経団連は11日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会(渡辺捷昭委員長、清田瞭共同委員長)と電子行政推進委員会(内田恒二委員長、間塚道義共同委員長)の合同会合を開催し、東京大学生産技術研究所の喜連川優教授から「ビッグデータの潮流とデータエコシステムについて」と題する説明を聞いた。概要は次のとおり。
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20世紀末から21世紀にかけ、多様な技術の進展により、あらゆる活動が非常に精緻に観測可能となったことなどにより、「ビッグデータ」という言葉が生まれたと考えている。
特に、昨年3月に米国がビッグデータへ2億ドルの研究開発投資を行うと発表して以来、にわかに取り上げられるようになった。
喜連川教授は従来から、「情報爆発」と呼んで研究を進めており、2005年からは文部科学省特定領域研究を、07年からは経済産業省のプロジェクトを進め、現在は内閣府最先端研究支援プログラムを推進している。
これほど膨大なデータが利用可能となるのは人類史上初めてであり、これをチャンスととらえ大量データの積極的な活用と、新たな価値の創出という視点から長年にわたり研究を進めている。
東日本大震災の際には、情報そのものの解析を通じ、震災時に実際に「何が」「どこで」不足しているのかなどの情報を明らかにすることを通じて、災害時の情報提供の重要性をあらためて実感した。
人のみならず、「もの」からの大量のセンターデータもビッグデータの源泉となる。例えば、自動車をセンサーとして取得したブレーキ情報や燃費情報は、分析を通じてドライバーの安全管理や業務改善などにつながるため、配送業者にとって極めて重要なデータとなる。センサー技術の進展と低価格化に伴い、社会活動の多くが高精細に補足可能となり、さまざまな分野で画期的なサービスが生まれる可能性が示唆された。
また、データそのものの重要性を再認識するとともに、データがある主体によって取得・加工され、加工されたデータがさらに別の主体によって利用されるという一連のプロセスの構築が不可欠である。このエコサイクルを回すことで、データを取得した主体にはデータを提供するインセンティブを与えることができ、研究・開発のスピードが大きく加速され、科学・産業に多大なインパクトをもたらす。
なお、ビジネス分野においては特に、データを第三者が利用する場合の法制度やガイドラインの整備が不十分である。グレーな状態ではニュービジネスは生まれにくい。ビッグデータビジネスを進めるうえでの障壁を取り除くための取り組みが早急に求められる。
【産業技術本部】