経団連は11月27日、東京・大手町の経団連会館で産業問題委員会産業政策部会(伊東千秋部会長)を開催し、駐日韓国大使館の姜明秀商務官・公使参事官から、韓国の産業政策について説明を受けた。説明の概要は次のとおり。
1.内外の経済環境の変化
グローバルな経済環境の変化として、欧州債務危機等の世界経済のリスクの増大、G20時代の幕明けとFTAネットワークの拡大等を通じた世界経済の軸の移動、異なる技術・産業の融合の本格化等の産業のメガトレンドの拡散、企業におけるグローバル競争力の源泉の変化が挙げられる。また韓国国内の変化としては、極端な競争主義は社会的にも経済的にも両極化を助長してきたという反省を踏まえて、ステークホルダーへの均等な利益配分や雇用創出をより重視する流れとなっている。こうしたなか、韓国政府はGDPを2020年に倍増させるという目標を掲げ、(1)大企業と中小企業が共に成長する健全な産業システムの育成(2)FTAによる世界市場および国内投資機会の拡大(3)本格的な融合化を通じた新たな成長エンジンの創出(4)安定的なエネルギー・資源の確保と供給基盤の拡充――という4項目に焦点を当てた政策に取り組んでいる。
2.大企業と中小企業が共に成長する健全な産業システムの育成
大企業と中小企業の二極化を放置すれば経済の潜在的な成長力を損なうこととなる。そこで民間企業を中心に「同伴成長委員会」を立ち上げ、両者が共に成長することが可能な環境整備に取り組んでいる。また、中堅企業を新たな成長エンジンとして位置付け、欧州経済が低迷するなかでも高い業績を上げているドイツの事例を参考にしながら、良質な雇用機会の創出につながる中堅企業の増加を目指している。具体的な施策としては、成長を妨げる税制等の負担の軽減、中堅企業に対する認識の改善、優れた人材の誘致等に努めている。
3.FTAによる世界市場および国内投資機会の拡大
FTA発効以降、韓国の貿易量は大幅に拡大している。同時に、韓国への投資魅力の向上にもつながっており、貿易ハブとしての国際的な地位を確立するに至っている。今後もその地位を強化するために米国やEUの先端企業に、アジアにおける進出先として選んでもらえるよう戦略的なIRを展開している。また、華僑資本や日本の部品・素材企業の誘致も積極的に行っている。他方、海外市場に進出している韓国企業の国内復帰を支援するために、租税減免や立地支援なども実施している。
4.本格的な融合化を通じた新たな成長エンジンの創出
ITの世界的な競争力をベースに、主力産業、素材・部品産業との融合を図り、高付加価値化することを目標にしている。同時に、バイオ・ナノ、ロボット、スマートグリッド、再生エネルギーといった分野を、新たな成長のエンジンとなる産業化促進分野として位置付けるとともに、その中核の基盤となる半導体等の研究開発支援を強化していく。さらに、将来の収益源は、人文学的な想像力・感性と技術が融合したところに生まれると考え、「技術人文融合創作所」の開設や研究開発にかかる人材への投資拡大等に取り組んでいる。
5.安定的なエネルギー・資源の確保と供給基盤の拡充
エネルギー・資源の安定確保は、持続的な成長を支えるうえで欠かせないことから、海外のエネルギー・資源の確保に努めてきた。その結果、石油・ガスの自主開発率は07年の4.2%から11年には13.7%まで上昇した。今後とも、国民が安心できる「シームレスかつ安定的」な電力の供給、エネルギー自立基盤の強化という観点から、電力需給システムの安定化、安全性を前提とした原子力発電の運営・管理、石油備蓄量の調整、資源外交努力の継続等に取り組んでいく。
【産業政策本部】