経団連は12月18日、新政権へのメッセージとして「地球温暖化政策に関する意見」を取りまとめ公表した。概要は次のとおり。
■ 基本的メッセージ
政府の温暖化政策は、経済成長との両立を図るものとすべきである。方向性を誤れば国内の空洞化が加速し、雇用や国民生活に多大な影響を及ぼす。
しかし、2009年、国民に開かれた透明な議論もないまま、中期目標(2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減)が決定され、国連に登録された。また、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度や地球温暖化対策税が導入されたばかりか、国内排出量取引制度の導入に向けた検討も進められている。
さらに昨年9月、エネルギー・環境会議は、実現可能性や国民負担など極めて問題の多い「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。経済無視の行き過ぎた温暖化政策は、企業の活力を奪い、イノベーションを阻害するとともに空洞化を加速する。
政府には、現実的なエネルギー戦略を再構築したうえで、表裏一体の関係にある温暖化政策を抜本的に見直すことを期待する。
■ 産業界の主体的取り組みの重要性
経団連はこれまで、環境自主行動計画を通じ、CO2削減に具体的成果を上げ、主要業種は世界最高水準のエネルギー効率を実現している。こうした主体的な取り組みが評価され、自主行動計画は、政府の「京都議定書目標達成計画」のなかで産業界の対策の柱と位置付けられている。
産業界は2013年度以降も、低炭素社会実行計画を通じて、世界最高水準の低炭素・省エネ技術の開発・実用化をさらに加速していく。
政府が京都議定書目標達成計画に代わる新たな温暖化政策を策定する際には、低炭素社会実行計画を同政策の柱に位置付けるべきである。
■ 政府の施策のあり方
政府は、低炭素社会実行計画を支援するため、環境整備を進めるべきである。特に、企業活力の発揮に向け、大胆な規制改革、研究開発促進税制の拡充、国民運動の推進等に注力すべきである。
他方、国内排出量取引制度は、企業活動に深刻な影響を及ぼすため導入すべきではない。
また、電力価格の上昇が見込まれるなか、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度や地球温暖化対策税は、国民生活や企業活動に悪影響を与え、イノベーションの阻害要因ともなるため、早急に見直すべきである。
■ 中期目標の再検討
国連に登録されているわが国の中期目標は、ゼロベースで見直すべきである。検討に際しては、実現可能性、国民負担の妥当性を検証しつつ、セクター別に削減余力を真水で積み上げる必要がある。同時に、国際的公平性を確保すべきである。
■ 国際交渉のあり方
真に実効ある温暖化対策を進めるためには、すべての主要排出国が責任あるかたちで参加する国際枠組の構築が不可欠である。2020年以降にすべての国に適用される新たな枠組においては、「共通だが差異ある責任」(注)に基づいて先進国と途上国を二分するのではなく、各国が「能力に応じた削減」に取り組む必要がある。
(注)共通だが差異ある責任=すべての国・地域は、人類の活動によってもたらされた温暖化に「共通」の責任を有するが、温暖化の主な原因をもたらした先進国と途上国では責任に「差異」があるとの考え方
【環境本部】