経団連の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は4日、東京・大手町の経団連会館で、ロシア連邦経済発展省のサヴェリエフ次官との懇談会を開催し、ロシアの経済発展戦略と経済特区制度について説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ ロシア経済の現状と課題
ロシアは政治的安定の下、グローバル化が進み激動する経済のなか、多様な変革を推進している。
最優先課題はロシア経済の強靭化である。そのため引き締め策をとって国家財政の均衡に注力している。2008年の世界的な経済金融危機の際、石油・ガス収入を積み立てた予備基金で対応した。現在、石油・ガス分野の近代化と高付加価値化を進めている。また、農業等への投資や産業のハイテク化により、石油・ガス収入への依存から徐々に脱却しようとしている。
経済分野において、旧ソ連圏の統合を進めることも重要課題である。ロシア、カザフスタン、ベラルーシの三カ国関税同盟を拡大することで、2億8千万人の巨大な統合市場が構築されるだろう。
■ 経済発展のための施策
今後のロシア経済の発展は、外国企業との協業がカギを握る。プーチン大統領は、ロシア国内で生産する企業をあらゆる手段で支援する方針である。例えば自動車では、エンジン等基幹部品の生産や部品メーカーの集積、研究開発センターや物流センターの設立も念頭に置いている。
ロシアは投資家が直面するインフラの未整備や汚職の蔓延、各種許認可の煩雑な取得手続き等、官僚主義によるさまざまな問題を認識している。投資環境全体の改善に向けて、工程表に則り適切な措置を実施していく。
具体的には、建設許可に必要な項目や期間の削減、電力網への接続の迅速化、税関手続きの簡素化等に取り組み、2018年までに世界銀行のビジネス環境ランキングで20位以内入りを目指す。
■ 経済特区の整備を推進
発展のためのもう一つの施策は経済特区である。特区では利益税、関税等の優遇、整備されたインフラ、簡潔な行政手続き等、快適なビジネス環境が提供され、経済発展省の専門家委員会が承認すれば、事業を展開できる。
06年に国営株式会社「経済特区」が設立され、ロシア各地の経済特区で日本企業を含む世界の主要企業が活動している。
ロシア政府は入居企業に高いステータスを与え、必要な支援を約束する。経済特区法により、安定した運営と外国投資家保護が保証される。また、ビジネス環境の一層の向上のため、毎年規則を見直している。経済特区の周辺には国の費用で従業員用の住宅や各種社会基盤を建設している。
今後はハイテク企業の誘致に一層注力したい。また、経済特区の運営を豊富な知識と経験を有する民間企業に委託しようとしており、日本企業の参加を期待したい。
■ 極東開発に経済特区を活用
プーチン大統領は、極東地域の開発に経済特区を活用する意向である。規制緩和による鉱物の加工や農水産物の加工も考えられるだろう。大学教育と連携した技術導入型特区の整備も検討している。
経済特区の成功事例から、各種優遇措置はもちろん、問題発生時に、企業が連邦政府や地方政府にすぐに相談できる体制整備の重要性を認識した。
ロシアの大きな飛躍のために、経済特区を通じた日本企業との協力に期待している。
【国際経済本部】