経団連は11月21日、東京・大手町の経団連会館で「情報セキュリティ人材に関する説明会」を開催し、内閣官房セキュリティセンター(NISC)の占部浩一郎内閣審議官をはじめ、経済産業省、文部科学省、中央大学、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)から説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ 内閣審議官・占部浩一郎氏
政府や民間企業がサイバー攻撃を受ける事件が多発しており、情報セキュリティ対策は非常に重要な課題となっている。高度なセキュリティ人材の育成が急務であると同時に、職員一人ひとりがセキュリティに対する意識を高め、日ごろから対策を怠らないことが重要である。
セキュリティ対策は今や経営課題であり、コストではなく投資と位置付け、セキュリティ人材の育成や職員の意識向上などに取り組むことが、結果的に企業経営の競争力に通じる。このことを、経営者には特に認識してほしい。
■ 経済産業省商務情報政策局情報セキュリティ政策室長・上村昌博氏
サイバーセキュリティ対策が企業課題となっている時代において、複雑化する脅威に対応できる人材の育成が急務である。
経営層から現場レベルの教育の充実を図るにあたり、客観的なスキルの確認手段の一つとして「ITパスポート試験」の活用が考えられる。ITパスポート試験は、経済産業大臣が認定する国家試験で、情報技術の基礎知識を出題範囲としている。受験者は毎年約10万人、合格率は50%程度である。エントリーシートへの記載など、採用時に活用している企業もあり、官庁でも社内研修で利用する例もある。より良い制度とすべく取り組んでいきたい。
■ 文部科学省高等教育局専門教育課長・内藤敏也氏
情報技術は、社会のあらゆる活動を支える基盤である。昨今の情報技術産業の情勢に鑑み、今後は情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる人材の育成に取り組みたい。
■ 中央大学理工学部長補佐・牧野光則氏
「ISS square(研究と実務融合による高度情報セキュリティ人材育成プログラム)」は文科省の平成19年度先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムとして始まり、現在は各参加大学院が自立的に運用している。修士課程の学生を選抜し、特別設計した教育・研究活動を通じ、情報セキュリティに関して優れた人材の育成に取り組んでいる。多くの修了生を輩出するにあたっては実践力を養う場がより必要となる。産業界には、インターンシップを含め、さらなる学習機会の提供をお願いしたい。
■ JNSA事務局長・下村正洋氏
情報セキュリティ人材は「情報セキュリティを理解している分野別の専門性をもつ人材」と「情報セキュリティプロフェッショナル」に大別できる。特に、後者の技術系人材は素質によるところが多く、才能を見つけて英才教育をしていくことが必要である。JNSAでは、インターンシップやセキュリティコンテストなどに積極的に取り組むことにより、引き続き情報セキュリティ人材の育成に注力する。
【産業技術本部】