経団連のヨーロッパ地域委員会(小林喜光共同委員長)は11日、東京・大手町の経団連会館で、IMF・世界銀行総会に出席のため訪日中のフィッシャー・イスラエル中央銀行総裁との懇談会を開催し、イスラエル経済情勢や日本との関係などについて聞くとともに意見交換を行った。フィッシャー総裁の説明の概要は次のとおり。
イスラエル経済は堅調
最近10年あまりのイスラエル経済の推移を概観すると、ハイテクブームに沸いた2000年をピークにITバブル崩壊による01年、02年のマイナス成長を経て、03年以降まずまずの成長を続けた。08年、09年の世界的な経済金融危機もうまく切り抜け、昨年の経済成長率は4.6%となった。この間、イスラエル中銀は金利を史上最低となる0.5%から3.25%の間で変更した。現在、インフレ率は目標の1~3%のほぼ中間にある。
景気指数、財・サービス売上高指数、鉱工業生産指数など各種経済指標も良好な数値を示しており、今年と来年の成長率は3%台を見込んでいる。
イスラエルのGDPの40%を貿易が占めるため、為替レートは金利に増して重要である。07年から08年にイスラエル中銀が初めて為替介入に踏み切った結果、通貨シュケルは減価し、その後の景気後退からの脱出と経済成長につながった。最近、輸出の中心はアジアに移動し、欧州や米国と同水準になっている。
財政赤字の削減に注力
01年から03年の景気後退で財政赤字が高水準となり、政府は対策に乗り出した。07年に財政赤字の対GDP比は0%台に縮小したがその後反転、09年に5.1%に上昇した。その後漸減しており、昨年は3.2%であった。
財政赤字の削減に向けて政府は、酒税、たばこ税、付加価値税、所得税の増税に加えて、政府支出を抑制しており、少なくとも2013年はじめまでは緊縮財政を継続するだろう。昨年の公的債務の対GDP比は74%と改善傾向にあるが、良い数字とはいえない。
ハイテク分野中心に二国間経済関係強化を期待
イスラエルの輸出品の80%は、OECDの定義におけるハイテク、中ハイテク製品だが、ハイテク製品の対日輸出は少量にとどまっている。また、対日輸入の中心の自動車では、韓国車等との競合が激化している。日本との二国間貿易の現状は満足のいくものではなく、質、規模ともに改善の余地があると考えている。
両国はともに開放的な貿易を支持し、研究開発に熱心に取り組むなど共通点が多く、特にグリーンテクノロジーや農業、代替エネルギー等での協力が可能である。
イスラエルは外資誘致に積極的に取り組んでいる。また、全く新しい発想を必要とするような困難な課題の解決に長けており、世界の名だたるハイテク企業が製造拠点や研究開発拠点を設けている。イスラエルは自らの能力を提供し、日本との経済関係を一層発展させていきたい。
【国際経済本部】