経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長)は12日、東京・大手町の経団連会館で、石原委員長就任後、初の会合を開催し、国際政治・外交政策が専門の米国コンサルティング会社マクラーティ・アソシエイツから米国の政治情勢、対東アジア政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 大統領選を控えた米国の政治情勢
-ネルソン・カニンガム氏(マネージングパートナー・共同創始者)
共和党陣営は熾烈な候補者指名争いの後、ロムニー候補のもとで結束を強化した。ロムニー候補は党大会で自己の保守政策とライアン副大統領候補を紹介し、多少支持を拡大した。他方、民主党陣営は、オバマ大統領が有力な対立候補もなく手堅く支持を固めた。この点、再選に失敗した歴代現職大統領が予備選で苦労した事実が注目に値する。オバマ大統領は支持を伸ばし、4-5ポイントの差でロムニー候補を上回っており、今日が投票日であればオバマ大統領が勝利している。今後は、10月に3回ある公開討論会における議論が注目される。
外交に関しては、ロムニー候補もライアン候補も外交・軍経験は皆無であるのに対し、有権者はオバマ大統領のイラク政策や対アルカイダ作戦を評価している。ただし、大統領選の前にイスラエルがイランの核施設に対し攻撃に踏み切れば、オバマ大統領はそれを支持するか否か困難な決断を迫られる。
■ 米国の対東アジア政策
-トーマス・ハバード氏(アジア担当シニアディレクター)
米国の過去40年以上の対アジア外交の歴史上、オバマ大統領は、最も積極的にアジア太平洋地域に関与し、同地域が米国の将来にとって重要との明確な認識を有している。経済的・軍事的に台頭する中国と適切な関係を築き、グローバルシステムに統合することは、日米共通の利益でもある。APECや東アジアサミットへの積極的関与や域内同盟国との関係強化といった政策は、大統領選挙後も踏襲されるだろう。
TPP(環太平洋経済連携協定)に関しては、決定するのは日本だが、日本の参加により地域・世界の貿易が拡大する。日本国内における議論の進展を期待している。また米国は領土問題にも心を砕いている。北朝鮮に関しては、新たな若い指導者により変化の兆しがみられる。オバマ大統領は対話を模索する姿勢だが、ロムニー候補が当選すれば強硬路線をとるだろう。
【国際経済本部】