経団連は12日、東京・大手町の経団連会館で米国会計基準の設定を行う財務会計基準審議会(FASB)のレスリー・サイドマン議長を招き、米国財務管理者協会(FEI)と共催で懇談会を開催した。サイドマン議長の説明の概要は次のとおり。
1.SECの最終スタッフ報告書について
国際会計基準(IFRS)を米国市場でどのように受け入れていくかに関し、米国証券取引委員会(SEC)で検討を進めていたが、7月に公表された最終スタッフ報告書では、今後の方向性にかかる提案は示されなかった。報告書では、IFRSに対し肯定的な評価がある一方、移行コストの大きさ、国ごとの適用状況の不整合、今後の国際会計基準審議会(IASB)の運営資金調達の不確実性、具体的な適用のための個別ガイダンスの不足といった懸念も述べられている。米国におけるIFRSの適用に関し、SECが何らかの決定を下すとすれば、大統領選挙の影響もあることから、早くても来年の半ばになるのではないかというのが大方の見方である。
2.FASBの今後の役割について
FASBはSECの決定の有無にかかわらず、今後とも各国の関係者と連携を図りつつ、グローバルに比較可能な会計基準の開発を進めていく。引き続き、IASBと共同で会計基準の収斂を進めることとされたテーマ(収益認識、リース、金融商品、保険契約)を完了させる予定である。
これらテーマのうち、金融商品と保険契約については二つの基準間で重要な差異があることを認識している。FASBとしては、高品質かつ実務対応が可能な会計基準を開発することが最優先と考えており、結果的に必ずしもIFRSと同一の基準を開発することにはならないかもしれない。また、多くの国が関係するなかで、FASBとIASBの間だけで、グローバルな調整を進めていくことは政治的にも実務的にも限界がある。
FASBとしては、より比較可能性の高いグローバルな財務報告を実現するために、世界各国の会計基準設定主体と連携し、共通の課題に対処するべく潜在的な解決策を共有したい。
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講演後の質疑応答では、IASBとのプロジェクト完了後のFASBの取り組みに関する質問に対し、「各国の基準設定主体間で連携を図り、さらに比較可能性を高めていくことが投資家の状況改善につながる」として、IASBのみならず各国との連携強化の必要性を強調した。会合終了後には懇親会が開かれ、日米双方の官民関係者が交流を深めた。
【経済基盤本部】