経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会雇用政策部会(橋本浩樹部会長)を開催した。当日は厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部の山田雅彦・障害者雇用対策課長、辻田博・高齢者雇用対策課長を招き、今後の障害者雇用対策および8月29日に可決・成立した改正高年齢者雇用安定法について説明を聞き、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 今後の障害者雇用対策について
厚生労働省では、8月3日、今後の障害者雇用対策のあり方に関し、有識者による三つの研究会報告書を公表した。いずれの研究会も「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(2010年6月閣議決定)等を踏まえ、障害者権利条約の批准に必要な制度改革等について検討したものである。これを受けて今後、労働政策審議会において、障害者雇用促進制度の見直しについて議論が行われる。各報告書の主な内容は次のとおり。
(1)障害者の範囲等の在り方に関する研究会
04年の労働政策審議会意見書のなかで、将来的に精神障害者の雇用を義務化する方向付けがなされている。近年、精神障害者に対する企業の理解の進展や雇用促進のための支援策の充実など、雇用環境は改善されてきたと考えられることから、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当であると整理された。
ただし、義務化の意味合いは非常に重く、企業の経営環境や企業総体としての納得感といった観点からは、実施時期については、慎重に結論を出すことが求められるとしている。
(2)障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会
同テーマについては、10年4月に労働政策審議会において「中間的な取りまとめ」がなされており今回、さらに検討を進めるために議論を行った。
障害を理由とする差別について、直接的な差別的取り扱いは禁止すべきであるが、「間接差別」は、具体的な基準や要件が明確でなく、現段階では差別禁止規定を設けることは困難であり、まずはどのようなものが該当するかの基準や要件を確定する必要がある。また、合理的配慮の不提供についても、新たな差別類型として整理できないため、その提供を事業主に義務付けることで対応すべきであると整理された。
そのうえで、合理的配慮は法律では概念や枠組みを定め、具体的な内容はガイドラインなどで定めるべきとされ、また、事業主の負担軽減のためには現行の納付金制度を活用すべきとされた。
(3)地域の就労支援の在り方に関する研究会
全般的に実雇用率が低い中小企業への支援強化を中心に指摘がなされ、そのために各就労支援機関に求められる役割について検討が行われた。
■ 高年齢者雇用安定法の改正について
今回の改正の主なポイントは、全員参加型社会の実現や厚生年金の報酬比例部分支給開始年齢引き上げへの対応のために、労使協定に基づく基準により継続雇用制度の対象となる高年齢者を限定できる仕組みを廃止することである。
経済界の働きかけもあり、国会審議において、民主・自民・公明の三党の提案により、修正がなされた。その内容は、継続雇用の対象外とすることができる者(解雇事由または退職事由に該当する者)の取り扱いに関する指針を定めることについて、その根拠を法律上規定するものである。
これを受け今後、(1)労働政策審議会の意見聴取(2)関係行政機関の長との協議(3)パブリックコメント――の各手続きを経たうえで、来年4月の施行に向け、速やかに指針を策定する。その際、労働政策審議会の建議や国会での議論を踏まえる必要があるが、使用者側の意見も十分尊重することが国会審議で確認されている。
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経団連では、今後の障害者雇用促進制度の見直しと、改正高齢法にかかる政省令改正・指針策定について、企業実務を踏まえ、柔軟な対応が可能となるように求めていく予定である。
【労働政策本部】