経団連の経済法規委員会競争法部会(川田順一部会長)は8月23日、東京・大手町の経団連会館で、「中国の競争政策ならびに知的財産政策に関するセミナー」を開催した。同セミナーは日中国交正常化40周年記念事業の一つであり、JICA(国際協力機構)の「独禁法立法及び執行プロジェクト」の第1回訪日研修の一環として、公正取引委員会の協力も得て実現したもので、約180名が参加した。
冒頭、公正取引委員会の南部利之官房審議官は、日本企業の中国進出と中国における経済法制の立法作業が進むなか、日本企業による中国法への理解が一層求められると述べた。続いて、JICAの柳沢香枝東・中央アジア部長が、中国側にとっても、日本企業の関心事が明らかになることは意義のあることだとあいさつした。
その後、独占禁止法分野と知的財産政策分野それぞれについて、来日した中国独占禁止当局幹部による講演、参加者との間で活発な意見交換が行われた。講演の概要は次のとおり。
1.中国の事業者集中に関する独占禁止法の立法及び法執行の最新状況
(尚明・商務部独占禁止局長)
中国で独禁法が2008年に施行されて以来、商務部では累計で500件超の事業者集中(企業結合)に関する案件を処理している。製造業を中心に年々申告件数が増加しており、海外の案件も多い。そのうち97%が無条件で承認されているが、承認案件については情報開示をしていない。今後の公表のあり方について検討中である。一方、禁止された1件、条件付き承認となった14件については、即日公表している。また現在、海外当局の独禁法の執行経験を参考に、簡易な届出・審査手続ならびに関連規定の整備に向けた準備作業を進めている。施行以来、まだ4年程度の運用実績しかないが、その総括を行い、運用の改善に努めていきたいので、意見があればぜひ寄せてほしい。
2.中国工商行政管理機関の独占禁止に関する立法と法執行における最新の進展
(張坤・国家工商行政管理総局競争・法執行局調研員)
国家工商行政管理総局における喫緊の課題は、知的財産分野における独占禁止法執行の手引きの研究・制定である。海外の競争当局の規定等を参考にしながら、独占禁止法と知的財産権保護はイノベーションの促進という共通の目的を有するとの考え方に基づいて作業を進めたい。取り締まりについては地方局への授権を進め、法執行を強化していく方針である。
3.特許権の濫用の規制及び独占禁止
(宋建華・国家知識産権局条約法律司長)
特許権は合法的独占権であるものの、その権利を用いて競争を制限したり、科学技術の進歩を阻害したりするような行為は許されない。そのため、出願権と訴権の濫用は特許法で、実施権の濫用は特許法と独禁法でそれぞれ規制している。特に、発明および実用新案の実施権の濫用に対して、国家知識産権局は強制実施許諾(注)を発動できる。
(注)強制実施許諾=特許権者の許諾を得ることなく、特許を実施する権利を第三者に認めるもの
【経済基盤本部】