経団連の農政問題委員会(小林栄三委員長)は8月25日、北海道・十勝地区を訪問し、同地区における畑作や酪農の現状を視察した。近藤龍夫北海道経済連合会会長の招請を受け実現した今回の視察には、飛田稔章JA北海道中央会会長、有塚利宣十勝地区農業協同組合長会会長、米沢則寿帯広市長ら地元農業界や行政の幹部が同行した。
大規模かつ先進的な北海道農業を代表する十勝農業
北海道・十勝は、1経営体当たり経営耕地面積が平均38.3ヘクタール(全国平均の約24倍)、農業算出額では道内トップ(全道の2割強を占める)を誇るなど、北海道農業のなかでも大規模かつ先進的農業を営む地域として知られている。産出額に占める割合は耕種部門と畜産部門でほぼ二分している。耕種では、畑作4品(小麦、豆類、馬鈴しょ、てん菜)を基幹とした輪作が行われている一方で、近年では、長いも、枝豆、大根、ニンジン等の収益性の高い野菜の生産拡大を進めるなど、経営の一層の効率化にも注力している。
地域の特性を活かした先進的取り組みを視察
一行は十勝地区の複数のJAを訪問し、各JAが各々の特色を活かしながら、さらなる競争力向上に取り組んでいる状況について説明を受けた。
JA幕別町では、野菜の大規模集出荷施設を視察した。同JAでは、最新鋭の真空保冷設備や冷蔵貯蔵庫を完備し、収穫時の鮮度を保持したまま首都圏をはじめとする消費者に供給するシステムが確立されており、積極的な設備投資等を通じた安全・安心な農産物の提供や品質向上への取り組みについて詳細な説明を聞いた。
JA帯広かわにしでは、十勝川西長いも産地化や輸出の取り組みに関し説明を聞くとともに、食品衛生管理の国際規格であるHACCP認証を取得した国内最大級の長いも洗浄選別施設を視察した。工業品の製造工程と錯覚してしまうほど洗練された選果作業工程に参加者からは驚きの声が上がった。
また、一行は十勝管区内の農耕地を一望できる嵐山展望台から、眼下の広大な耕作地を一区画ずつ確認しながら、畑作4品を中心とした輪作農法が行われている意義についての説明に熱心に耳を傾けた。下山後、JAめむろ管内の圃場において、馬鈴しょ、枝豆等の栽培・生育状況を視察した。
JA中札内村管内のみどり牧場では、経営安定化に向け、畜舎内パーラーの設置や1日3回搾乳の導入等を通じた生産性向上・効率化への取り組みが図られており、参加者は今後の課題等について説明を受けるとともに、乳牛の飼養状況を視察した。
地元農業界幹部・若手との意見交換も実施
このほか参加者は、十勝地区の農協代表理事組合長、若手農業者と懇談し、十勝農業の今後の展望や産業界と農業界の連携の可能性等について率直な意見交換を行った。
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農政問題委員会では、わが国農業の活性化に向け、今後も各地農業界との対話・交流を通じ相互理解を深めるとともに、農商工連携はじめ農業界と産業界の連携・協力を推進していく。
【産業政策本部】