経団連は12日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、EU(欧州連合)の行政執行機関である欧州委員会のマリア・ダマナキ委員(漁業・海事担当)を招き、EUの海洋政策について説明を聞くとともに意見交換を行った。会合の概要は次のとおり。
■ Blue growth
欧州委員会はEUの海洋政策を実施している。現在、ヨーロッパは経済危機のなかにあるが、海洋のポテンシャルを雇用創出につなげるため、EUは“Blue growth”という海洋に基づく成長を目指している。
まず、海洋エネルギーについては、EUの風力発電において洋上風力発電が占める割合を2020年までに3割、2030年までに6割に引き上げる目標を設定している。次の予算では、海洋エネルギーの研究開発予算を倍増する。
また、海洋観光と沿岸海運の振興を図る。クルーズやダイビングなど海洋を使った多様な観光や、EUの加盟国同士をつなぐ沿岸海運には成長の可能性が高い。
さらに、深海における鉱物資源を開発する。2020年までに、ヨーロッパのすべての海域の状況を一目で把握できるマップをつくることを目標にしている。
来年、欧州委員会は、養殖、観光、漁業などの活動での各国間の衝突を防ぐため、海洋空間計画に関する指令を策定する。
■ 海賊問題への取り組み
ソマリア沖・アデン湾における海賊問題については、EUはNATOと共同してアタランタ作戦を実施している。日本の協力にも感謝する。海賊問題の根本対策として、ソマリア政府への資金支援が必要であり、EUは世界最大の支援をしている。国際海事機関(IMO)と連携して、海賊行為に対する法制度を整備することも課題である。
<意見交換>
山脇部会長が「EUにおいて取り組みが進んでいる海洋再生可能エネルギーの研究開発や商業化について対話を行いたい。また、ソマリア沖・アデン湾の海賊対策の体制を強化してほしい」と述べたのに対し、ダマナキ委員は「経団連の提言は実行可能であり、参考になる。対話をするところから、政策やビジネスが動いていく」と答えた。
【産業技術本部】