経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会(元山登雄委員長)を開催した。当日は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の平朝彦理事長(今年4月1日に就任)から、同機構の取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。平理事長の説明の概要は次のとおり。
■ 地下生命圏
海底堆積物には莫大な量の微生物が存在することが確認されているが、その実態はほとんどわかっていない。
JAMSTECが保有する地球深部探査船「ちきゅう」は海底を7000メートル掘削する世界最高の能力があり、これを用いれば、海底探査において世界でリーダーシップを発揮できる。これまで南海トラフや日本海溝を掘削した。7月からは下北八戸沖の掘削を始める。
■ メタンハイドレート
メタンハイドレートとは、海底の高圧のもとで氷状となったメタン水和物である。日本近海では、南海トラフ、北海道の沖合、日本海沖などに多く賦存するエネルギー資源である。
「ちきゅう」が掘削したところ、紀伊半島沖の泥火山に大量のメタンハイドレートが存在していた。これを分析することで地下10キロメートルのプレート境界の性質についても知見が得られる。
■ 地震断層の調査
「ちきゅう」は南海トラフの地震発生帯を集中的に掘削した。地震が起きたときに、断層が動いた摩擦によって岩石の破壊が起きて温度が上がる。これによる化学変化が生じ、海水から大量の水素が発生し、二酸化炭素と反応すれば微生物が発生する。
マグニチュード9の東北地方太平洋沖地震では、海溝斜面が50メートル東へ動いたことがJAMSTECの調査によりわかった。また、震源の断層のサンプルを回収することに成功した。断層の動きにメタンや微生物が関係しているのかについても調べたい。
■ マントルの調査
将来は、地殻の下にあるマントルまで掘削して、地球内部における生命活動の証拠を探したい。コスタリカ沖、メキシコ沖、ハワイ沖が掘削する地点の候補である。
<意見交換>
元山委員長が「JAMSTECの研究開発には期待しているが、産業界としては海洋にビジネスチャンスを見つけたい」と述べたのに対し、平理事長は「わが国が持つ広大な排他的経済水域は海洋生物の宝庫でもあり、産業界はそこに着目すべきである」と答えた。
【産業技術本部】