経団連の観光委員会(大塚陸毅委員長、山口範雄共同委員長)は6月20日、都内で会合を開催し、国土交通省観光庁の又野己知次長から、3月に閣議決定された新たな「観光立国推進基本計画」(以下、基本計画)の内容を聞き、意見交換を行った。
又野次長は、「観光は裾野の広い産業であり、経済波及効果も大きい。特にわが国は、外国人旅行者受け入れ数を伸ばし外貨を獲得することについての認識と対応が遅れたが、逆に言えば成長する東アジアのなかでここに伸びしろがある」と説明。そのうえで今回の基本計画の特徴として、「『観光の裾野の拡大』と『観光の質の向上』という方向で全体を見直すとともに、わが国観光が昨年の東日本大震災により甚大な影響を受けた一方、ボランティアや被災地応援ツアーなど観光の新たな潮流が生まれ、地域の史跡や遺産に対する関心も高まっていることから、『震災からの復興』を基本的な方針に掲げた」と解説した。
また、基本計画の目標については、「国内における旅行消費額で2016年までに30兆円(2009年実績25.5兆円)、訪日外国人旅行者数で2016年までに1800万人(2010年実績861万人)との高い目標を掲げるとともに、観光地域や旅行サービスの質の向上を図るため、満足度の指標を追加した」と説明。これらの目標を達成するために、「政府は、オールジャパンによる訪日プロモーションの実施、国際会議や展示会の分野での競争力強化に向けた徹底したマーケティングと関連産業の競争力強化・受け入れ環境の整備、休暇改革の推進等の諸施策を総合的かつ計画的に講じていく」と言及した。
さらに、「今回の基本計画期間から、毎年度当初に、目標の達成状況、施策の推進状況の点検、施策の効果に関する評価を行うとともに、観光庁は関係省庁に対し、当該点検・評価の結果について翌年の施策に反映させるよう働きかける」と述べた。
■ 意見交換
続いて行われた意見交換では、まず大塚委員長から、「今回の基本計画では、震災の影響を踏まえつつも高い数値目標を国として掲げたこと、民間では当たり前だが政府として毎年のローリングを行うと明記したことがポイント。意欲的な基本計画となったと認識している」との発言があった。
また、委員からは、「震災後、東北観光博の実施など官民を挙げた東北観光復興の取り組みにより国内観光客は徐々に戻りつつあるが、訪日外国人観光客は大きく落ち込んだままであり、取り組みを強化してほしい」との要請があったのに対し、又野次長からは、「数字の上では中国人観光客は回復してきているが、韓国人の訪日客数が落ち込んだままであり、政府としてもさらなる対応策を議論している。日本政府観光局や日本観光振興協会などとも連携して対応を進めたい」との見解が示された。
なお、当日は、観光委員会の当面の活動についても議論し、今後、官民を挙げて観光立国の実現を図るため、シンポジウム等の開催、観光関連産業の経営革新とその支援に向けた優良事例の研究と横展開、観光人材育成や民間外交の展開等に取り組むこととした。
【産業政策本部】