経団連(米倉弘昌会長)は14日、提言「インフラ輸出の競争力強化を図り、わが国の成長につなげる」を取りまとめた。
アジアをはじめとする新興国へのインフラ輸出は相手国の成長基盤を強化するだけでなく、わが国の成長にも大きく貢献することから、成長戦略の主要な柱となっている。そうしたなか近年、コンソーシアムを組む日本企業グループが国際受注競争で敗退する事例も見られることから、国際競争力の強化が課題となっている。とりわけ、大型のインフラ整備には、膨大な資金とそれに伴うリスクが存在するため、官と民の連携が不可欠である。
政府においては、関係閣僚が一堂に会し、民間企業の取り組みを支援する「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」を開催している。また、2008年には新しく国際協力機構(JICA)、今年4月には国際協力銀行(JBIC)が単独で再発足した。
これらの取り組みを確実にインフラ輸出の実現につなげるためには、インフラ輸出の各段階において、制度を改善し、必要とされる方策を早急に講じていくことが不可欠である。
提言のポイントは次のとおり。
■ インフラ案件の発掘と形成の推進
企業が競争力のあるインフラ案件を組成・遂行するため、関係省庁間の連携強化、適切な支援措置と十分な情報提供、若手コンサルタントの育成、PPP(官民パートナーシップ)の実施可能性調査(FS)の枠組み強化、現地ODAタスクフォースでの民間人材の活用が必要である。
■ ファイナンス・保証の充実
機動性を向上させたJBICの積極的な活用、JICAの海外投融資の早期本格実施を求める。円借款については、対象国の拡大と年次供与額の弾力化、手続きの迅速化、現地通貨建てやドル建て借款の導入を行うべきである。
■ リスクテークの取り組みの強化
国益上重要な案件に対しては、政府が全面的にバックアップし、わが国企業に大幅なリスクテークが求められることがないよう、わが国の交渉力を強化するとともに、JICAがリスク配分の指針をつくるべきである。
■ 国際標準化戦略の推進
市場におけるわが国企業の活躍によるデファクトスタンダード(事実上の標準)の確保と、政府間交渉における交渉力強化や長期戦略に基づく技術者の育成支援などの多角的なアプローチを通じて、わが国主導のスタンダードを確立・展開すべきである。
■ 相手国におけるPPP法制、入札制度の整備等
JICAが各国のPPP制度の情報集約を行い、相手国における法制度整備を支援するとともに、海外におけるわが国PPP事業の競争力強化のために、国内においてPFI事業の経験を積む必要がある。
■ 重点国との政策対話の強化
今後のインフラ需要が見込めるミャンマーなどのメコン諸国をはじめとするアジア地域等における、官民一体となった政策対話を早急に実施すべきである。
提言は発表と同時に、藤村修内閣官房長官、古川元久国家戦略担当大臣に手交したほか、関係各方面に建議した。今後、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合や経済産業省産業構造審議会での議論を通じて、官民連携による制度設計に反映していきたい。
【国際協力本部】