経団連は21日、東京・大手町の経団連会館で、産業・地域復興部会(高尾剛正部会長)を開催した。来賓の岡本全勝・復興庁統括官から、「大震災からの復興-官の役割、民の役割」と題して、復旧・復興の現状と課題や対応策について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 復興庁の役割
かつてない規模の被害、被災自治体の施設・機能の喪失等を受け、国や他自治体による支援が果たす役割は大きい。阪神・淡路大震災の教訓を活かし、国は復興庁という一元的責任組織を設置した。復興庁は復興に関する国の施策の企画・調整および実施とともに、地方自治体への一元的な窓口として、すべての要望や苦情を受け付け、各担当府省を決め、支援等を担う。
■ ヨコの支援における課題
他自治体による支援に関しては、警察・消防は全国的な応援態勢を整備していたため、迅速に展開できた。問題は、死亡者の戸籍抹消、義援金の支給、仮設住居への入居手続き等の市町村の事務における人員不足である。土地区画整理事業を担当する人員も不足している。
そうしたなか、発災直後、各県の集積所から各市町村への物資の仕分け等では民間事業者の活躍に助けられた。今後も国が持っていない民間のノウハウやシステムを活用していきたい。
■ インフラ関係・被災者支援
主なライフラインは、津波による家屋等流出地域や原発の立入禁止区域を除き、ほぼ復旧している。がれきの処理も3年間かけて完了する計画であり、作業は予定どおり進んでいる。
被災者支援については、仮設住宅の建設に加え、民間住宅の借り上げを進めるなど柔軟かつ迅速に対応したが、被災者が孤立しやすい、全国各地に避難した被災者との連絡が容易でないといった問題点も発生している。
■ 地震津波被災地域の復興に向けた課題
地震津波被災地域については、本格復旧に向けた計画を策定し、住宅とまち並みの整備に向け、道路や堤防建設、移転を含め具体的検討を進めている。
■ 福島の復興
現在、霞が関が総力を挙げて、生活再建対策、産業振興・雇用対策、放射線対策、グランドデザイン・基本方針等の策定に取り組んでいる。政府としては、高齢者、子ども、その親等、さまざまな住民の意向調査を今後実施していく。
■ まちの復興と企業による本業を通じた支援の重要性
まちの復興には、医療、教育、商業等の働く場が欠かせない。そこで企業には、企業活動の再開や、復興事業への参画を通じた知恵、資金、人材の提供をお願いしたい。雇用の場の再建を通じたまちの復興にも協力してほしい。復興庁内に、経団連はじめ民間からの出向者を中心に、企業との窓口を務める「企業連携班」を設置した。具体的成果はこれからだが、現在、企業が求める情報の収集を進めており、被災自治体側の希望とのマッチングに取り組む予定である。
【産業政策本部】