経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)は4月24日、東京・大手町の経団連会館でアンヘル・グリアOECD事務総長との懇談会を開催した。懇談会後、グリア事務総長は日本が直面する政策課題等に関し、米倉会長とも会談した。懇談会におけるグリア事務総長の発言の要旨は次のとおり。
焦点は政治のリーダーシップへ
米国については、雇用、消費に改善が見られ、大企業に投資意欲が戻るなど経済の回復が実感されるようになっており、2-3%成長が見込まれる。他方、政府債務と財政赤字の問題は、行政府と議会とのはざまで何らの決定もなされない状態に陥っている。赤字削減を急ぎ過ぎると成長が犠牲になりかねない。
他方、欧州経済は景気後退局面にある。2012年はおそらく0%近辺のマイナス成長となり、同年末ごろから回復、2013年にプラス成長に転じる見込みである。ギリシャ支援策の決定、財政協定の合意、欧州中央銀行による商業銀行向けの資金供給、ファイアーウォールの強化などの進展により、そして何よりイタリア、スペインによる適切な政策によって恐れていた危機の伝播を回避できている。ただし、銀行の資本増強やフランスその他の財政調整は今後の課題である。さらに、フランス大統領選挙でオランド候補が勝利した場合、同候補は財政協定の見直しを明言しており、また、オランダにおいても連立政権が崩れるなど、欧州においても、政治のリーダーシップの問題に焦点が当たりつつある。
日本再生のための政策を提言
今般、日本再生のための提言をまとめたので、政策決定にあたって参考にしてもらいたい。OECDは、2015年10月までに消費税率を2段階で10%に引き上げるという野田政権の方針を支持している。日本の消費税率はOECD加盟国内で最低水準にある(OECDの平均は18%)。また、経済のさらなる自由化が必要である。とりわけ環太平洋経済連携協定(TPP)に参加することが重要である。あわせて農業分野の改革を推進する必要がある。日本が原子力発電を維持することを支持する。
開発、ジェンダー、技能等がOECD閣僚理事会の主要議題
5月23~24日のOECD閣僚理事会では、開発、ジェンダー、技能等に関する戦略が採択される見通しである。OECDが女性の労働参加を主張するのは、倫理的な理由からではなく、その活用が経済的に意味を持つと考えるからである。また、技能は、いわば21世紀のグローバル通貨であり、使われなければ価値が下がる。生涯を通じて継続的に開発・改良していく必要がある。
【国際経済本部】