経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は16日、報告書「グローバルJAPAN-2050年 シミュレーションと総合戦略」を発表した(前号既報)。同調査研究は、2050年に向けたわが国としての総合戦略を策定することを目指し、21世紀政策研究所の特別プロジェクトとして2010年11月に発足、11年1月から本格的な検討を開始した。
研究体制としては、グローバルJAPAN特別委員会の委員長に森田所長、研究全体を総括する主査に丹呉泰健・前財務事務次官が就任した。また、研究分野ごとに三つのサブ・コミッティを設置。経済・産業・雇用分野の研究主幹は鶴光太郎・慶應義塾大学大学院商学研究科教授、税・財政・社会保障分野の研究主幹は土居丈朗・慶應義塾大学経済学部教授、外交・安全保障分野の研究主幹は白石隆・政策研究大学院大学学長である。各サブ・コミッティの委員は、学者、シンクタンク研究者、企業人、若手官僚などからなり、産学官が連携する体制となっている。
11年1月以降、内外の第一級の有識者などからのヒアリングならびに意見交換を行い、また、英国・デンマークにおける財政・経済事情や、国内の自治体が進める先進的な高齢者対策の取り組みなど、内外での現地調査も実施した。
報告書の最大の問題意識は、日本経済が「失われた20年」と言われるように、名目GDPが20年前の水準に止まり停滞を続ける一方で、GDP比200%に達する政府債務、長期的なエネルギー問題など、取り組むべき課題が山積していること、しかも、今後、世界の先陣を切って人口減少が進み、経済社会全体に甚大なインパクトを及ぼすことが避けられないというものである。いま改革に着手せず、現状を放置すれば、わが国は先進国としての地位から転落するおそれすらある。
同時に報告書は、わが国が21世紀の成長センターであるアジア太平洋地域の中心という絶好のポジションにあることから、「危機克服のチャンスは目前にある」ことをあわせて強調している。
このような問題意識に基づき、報告書では、第1に、2050年までの世界経済・日本財政シミュレーションを実施している。同シミュレーションでは世界50カ国についてGDP、1人当たりGDPの推計を行った。日本経済については、生産性上昇率や労働力率についての仮定を変化させた四つのシナリオを作成したが、いずれのシナリオにおいても、人口減少による労働力人口減少、資本ストック減少の影響が大きく、2030年以降、日本経済は恒常的にマイナス成長に陥るおそれがあることを指摘している。
第2に、2050年の世界に影響を与える基本的変化と日本の課題として、(1)世界の人口増と日本の人口減・高齢者人口の大幅増(2)グローバリゼーションとITのさらなる深化(3)中国を含むアジアの世紀の到来(4)資源需給――の四つを挙げている。
これらを踏まえ、第3に「論点と提言」として、(1)人材(2)経済・産業(3)税・財政・社会保障(4)外交・安全保障――の分野にわたり、計14の提言を行っている。
基本的な考え方としては、人材については、切磋琢磨を通じて成長を目指す「全員参加型」「一億総努力社会」を確立すること、経済・産業については、アジア太平洋の活力を取り込み日本経済の成長力を強化すること、税・財政・社会保障については、改革を決して先送りせず、財政の健全化と社会保障制度の持続可能性確保に向けた取り組みを進めること、外交・安全保障については、わが国が日米関係を基軸とした国際秩序の形成とアジア太平洋の繁栄に積極的に関与することを求めている。
報告書の詳細な内容については、今後連載形式で順次紹介していきたい。
【21世紀政策研究所】