経団連は3月30日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(広崎膨太郎部会長)を開催した。部会では、政府の新成長戦略でも重要プラットフォームとうたわれているTIA(つくばイノベーションアリーナ)の最近の活動や知財の取り扱いに関する検討状況について、岩田普・拠点運営最高会議事務局長、間中耕治・知的財産ワーキンググループ(WG)委員長から説明を受けた。説明の概要は次のとおり。
1.TIA‐nanoについて
近年の日本経済の行き詰まりと国際競争力低下への懸念が高まる一方、諸外国ではオープンイノベーションを志向する研究開発体制への取り組みが加速化しつつある。そのようななか、わが国産業界からも拠点を活用した研究開発力強化への期待が高まったことを受け、政府は大規模な予算措置を講じ、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、筑波大学を中核3機関とする、世界的なナノテク研究拠点を目指す「TIA‐nano」を2009年に設立した(今月からこれら3機関に加え、高エネルギー加速器研究機構が参加)。
2.TIA知財WGにおける検討状況について
(1)2010年度の知財WGの中期計画(2010~14年度)における基本方針
拠点が魅力あるものとなるためには、拠点で生み出された知財の取り扱いが一つの重要な課題として認識されており、TIAでは各研究コア(注1)の知財担当者等が集まる知財WGを設置し検討を行っている。
2010年度に取りまとめた中期計画のなかでは、TIA成立以前から存在していた技術研究組合等における知財ルールを踏まえつつ、TIA全体としての知財に関する基本的な方針を設定するとともに、その実現に向け「TIA知財」(注2)の情報を一元化する仕組みや各機関におけるTIA知財を取り扱うルールの調和等に取り組むこととしている。
(注1)TIAはナノエレクトロニクスなど六つの研究領域とナノテク共用施設など三つのコアインフラを持つ
(注2)TIAの中核機関が所有する知財
(2)今後の取り組み
TIAでは中核機関やプロジェクトごとに知財の取り扱いに関するルールが異なっており、TIA‐nanoとしての統一したルールの策定が求められている。また、拠点における研究成果に基づいた新たなビジネスモデルの構築に向け、知財戦略(国際標準化戦略を含む)・研究戦略・事業戦略との関連付けも課題として指摘されている。
これらを踏まえ、今年度の知財WGでは、中核機関による知財担当者連絡会の設置やTIA知財に関する情報発信の開始、研究コアとの意見交換を通じた研究コアの知財戦略・標準化戦略の整理等、本格的な検討を行っていく。
【産業技術本部】