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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月5日 No.3081 モンティ・イタリア首相と懇談 -日・EU経済連携協定などで

発言するモンティ・イタリア首相

経団連ヨーロッパ地域委員会(小林喜光共同委員長、横山進一共同委員長)は3月28日、東京・大手町の経団連会館において、イタリアのマリオ・モンティ首相との昼食懇談会を開催した。座長を務めた小林共同委員長は、欧州経済の成長力強化という観点から日EU FTA/EPAの意義を強調するとともに、EUが関心を有する非関税措置問題の解決に資するべく、経団連として業界対話を促進していることなどを説明し、早期交渉開始に関しモンティ首相の理解と支援を求めた。また、署名後3年が経過している日伊社会保障協定の早期発効に向けて、イタリアでの国会承認手続きを早急に進めるよう要望した。30日には、米倉弘昌会長もモンティ首相と会談、日・EU経済連携協定の早期交渉開始を重ねて要請した。
懇談会におけるモンティ首相の発言の要旨は次のとおり。

イタリア経済の構造改革を断行

昨年11月の政権発足以降、イタリア経済を安定させるとともに、潜在成長率を伸ばし、企業に優しい環境をつくるという二つの目的を達成するために、厳格な措置を講じてきた。その結果、イタリアが危機の源泉となる可能性を摘むことができた。

2013年に財政収支を均衡させるという目標を実現するためには、プライマリーバランスでGDP5%に相当する黒字が必要となる。そのため、年金制度を欧州において最も先進的で持続可能なものに改革した。2017年までに退職年齢を男女とも67歳に引き上げ、退職年齢を平均寿命に連動させることで、高齢化社会への対応を図っていく。

また、成長率向上のための措置として、企業の資本変更に対する税制上の優遇措置、労働コストに占める税金部分の引き下げ措置等を導入した。さらに、自由化・競争促進のための政策のパッケージとして、ガスの生産・供給の所有分離、鉄道に関しても同様の措置を講じるとともに、自由業の最低料金を撤廃した。

これらの措置はすべて超党派の政府だからこそ実現可能であった。さまざまなしがらみ、特権や制限に対して、現政権は真っ向から取り組んでいる。また、会社設立に関する行政手続きを簡素化することで企業に優しい環境を実現する。先般提案した労働市場の改革によって、既得権益で保護された労働者と非正規労働者との間の垣根を取り除きたいと考えている。また、企業による雇用、解雇を容易にすることによって、景気後退局面で労働力を柔軟に調整できるようにしたい。

以上の改革を通じて、投資家から見たイタリアの弱みが強みに変わることを期待している。1年後に政権が交代するときには、世論もイメージも今とは異なり、政党の姿勢も変わり、改革が根付いていると予想している。

日EU FTA/EPA交渉開始を期待、非関税障壁への十分な対処が必要

多国間主義、市場開放、FTAを強く支持しており、日EU FTA/EPAについても、スコーピング作業で進展を見た後、交渉開始できることを大いに期待している。

FTA/EPAが完全に機能するためには、非関税障壁について十分対処されなければならず、それなくしてFTA/EPAを想像することはできない。そのような条件を満たすことができるよう、経団連から日本政府に対して働きかけてほしい。

日伊社会保障協定の発効に向けてイタリアへの投資拡大を期待

日本からの直接投資を拡大するために社会保障協定が重要ということは理解しているが、予算上の問題から国会の承認を得られずに今に至っている。イタリア経済あるいは欧州経済の改善を受けて、近い将来、日本の対イタリア投資が増加するような動きがあれば、協定締結が新たな投資を呼び込むことになると議会に説明しやすくなる。

【国際経済本部】

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