近年、国際政治経済の世界では、「エコノミック・ステイトクラフト」(国家が戦略的目標のために経済的手段によって他国に影響力を行使すること)への関心や懸念が高まっている。機微技術・情報、エネルギー、希少資源、農水産物など特定品目の関税、輸出入規制、投資規制など、経済安全保障を大義とする国々の動きは、枚挙にいとまがない。
パリ協定に基づくカーボンニュートラル社会を目指す共創の場も、エコノミック・ステイトクラフトの動きに無縁ではない。大国やその経済圏は、それぞれの圧倒的な力を活かして、市場シェア獲得に資する補助金政策や各種税制、炭素国境調整措置を含む関税などの運用を通じ、自国に利益をもたらす産業振興、リショアリングやデリスキング政策を進めている。そうした動きには、来たるグリーン社会においても、より高い付加価値を生み出す社会産業構造に自らを転換し、競争優位性を獲得せんとするしたたかな戦略が透けて見える。
翻って日本はどうだろうか。国内には資源や広大な国土や経済圏はない。太陽光や風力といった再生可能エネルギー源についても、国際的な競争優位性があるとは言い難い。それでもなお、日本が国際社会で必要とされる国であり続けるには、日本独自の「勝ち筋」を自ら見いだし、官民連携を通じて努力を重ねる必要がある。
いまこそGX2040ビジョンのもと、エネルギーインフラ構造、産業構造や産業立地のあり方を再定義し、「グリーン日本」への転換と繁栄を目指す時であろう。常に重んじるべきは、戦後今日に至るまで日本が長きにわたり、官民連携を通じてグローバルバリューチェーンを構築し、各地域の社会課題解決と経済成長の一翼を担うことで共に成長し、世界各地で勝ち得てきた信頼である。脱炭素化の新時代においても、他国から信用され必要とされるよう、自らを改革し、地力を鍛え、パートナー国と共存共栄を目指して共創をしたたかに主導することこそ、私たちが歩む道である。