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月刊 経団連  巻頭言 Well-beingを実現する未来志向の人材育成

渡邉 光一郎 (わたなべ こういちろう) 経団連副会長/第一生命ホールディングス会長

ロシアのウクライナ侵略などを巡る現下の国際情勢は、日本の様々な課題を顕在化させた。日本がエネルギーや食料安全保障の確保などに追われる一方、世界はDXやGXが進んだ先を見据え、次世代原発技術や核融合炉、そして光電融合・量子への投資およびそれに対応する人材育成を進めており、さらにサイバーや宇宙領域も強化している。

今後も、社会構造の変化に加え、思いも寄らない新たな課題が生じるだろう。その対応には、バックキャスト的アプローチで社会を再設計し、価値創造や社会変革に挑戦する人材の育成がカギとなる。

こうした状況を踏まえ、政府でも人材育成について様々な議論を進めている。私も取りまとめに参画した総合科学技術・イノベーション会議の「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」では、社会構造の変化の中で新しい価値を生み出すのは「人」であるとし、多様性を重視した教育・人材育成への転換に省庁横断的に取り組むことを示した。また、教育未来創造会議の第一次提言は、人への投資を通じた成長と分配の好循環を教育・人材育成において実現することは、新しい資本主義の実現に向けた喫緊の課題と捉え、大学等の機能強化や学び直しを促進するための環境整備等について提言している。

経団連では、初等中等教育段階からのSociety 5.0に向けた能力の育成に加え、大学を卒業した社会人も、経済・社会の変化に対応して、新たな知識や技能を身に付け、成長分野に移動していくこと、すなわち「仕事と学びの好循環」が重要と考えている。

「仕事と学びの好循環」をベースに、一人ひとりが変化に柔軟に対応できる力を持ち、他者と協働し社会課題の解決を進めることは、個人と社会のWell-being実現につながる。人材への投資が必要な理由は、単なるデジタル化への対応や生産性向上のためだけでなく、多様な幸せを追求するためである。だからこそ、産学官一丸となり、人中心の社会であるSociety 5.0に向けた人材育成を進めていきたい。

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