1976年4月に私が経団連に入局した頃、事務局は「団体屋」と呼ばれ、諸先輩は様々な分野における政策のプロとして、官僚と丁々発止の議論をしていた。皆、強い個性の持ち主で、特にこれといった新人教育もなく、仕事は自分の背中を見て覚えろといった調子であった。経団連が一躍有名になったのは、1980年代の「土光臨調」からである。その頃から優秀な学卒や院卒の定期採用も始まった。近頃では経団連事務局は、経済界の「シンクタンク」という評価も頂けるようになった。大変、嬉しいことである。
10年ほど前、経団連が新しい会館に移転する際、当時の和田龍幸事務総長から総務部長の私に対し、「せっかく入れ物が変わるのだから、この機会に事務局の理念を作るように」との指示があった。そこで何人かの仲間と取りまとめたのが、以下の「経団連事務局の理念(ミッション)と行動指針」である。以来、機会あるたびに事務局員に対し、順守の徹底を呼び掛けている。
1.理念(ミッション)
私達は、経済界の公正な意見をもとに政策を立案し、その実現に努め(Policy & Action)、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与します。
2.行動指針
- (1) 会員のニーズに応え、会員との密接なコミュニケーションを図りつつ、行動する政策集団を目指します。
- (2) 時代の変化を先取りし、民主導の活力ある経済社会づくりに向けて、政策を提言し、その実現に努めます。
- (3) 経済界はもとより、幅広い人や組織との交流や対話を通じ、理解と協力を求めてゆきます。
- (4) 人を育て、活かし、進化し続ける開かれた組織を目指します。
- (5) コンプライアンスの徹底と適切な説明責任を果たし、内外からの信頼確保に努めます。