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月刊 経団連  座談会・対談 新時代の日ASEAN関係 ─連携と協創による持続可能な社会の実現に向けて

木村 福成
慶應義塾大学経済学部教授

大庭 三枝
神奈川大学法学部教授

東原 敏昭
経団連副会長
日立製作所会長

佐々木 伸彦
日本貿易振興機構 (JETRO) 理事長

原 典之
経団連アジア・大洋州地域委員長
三井住友海上火災保険会長

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ASEAN(東南アジア諸国連合)は1967年の設立以来、半世紀以上にわたり、加盟国を拡大しながら地域協力機構として域内における経済成長、社会・文化の発展などに取り組んできた。こうした中、近年のASEANの経済発展を背景に、日本にとっての重要性のみならず、国際社会においてASEANが果たす役割への期待が高まっている。
そこで経団連では、ASEANの持つ重要性に改めて着目し、2021年6月に、提言「新時代の日ASEAN関係 ─連携と協創による持続可能な社会の実現に向けて」を公表した。
本座談会では、日本とASEANの双方が持続可能な社会の構築に向けて、今後どのような連携・協創を進めていくべきかについて、国際関係、ビジネス、人的交流など多角的な観点から議論する。

原 典之(経団連アジア・大洋州地域委員長/三井住友海上火災保険会長)
日本企業の国際競争力は、この地域に広がるサプライチェーンを源泉としており、ASEANは一体不可分のパートナーである。経済発展が進み、市場としての魅力も高まっている。自然災害など共通の課題には、日本の知恵を共有して助けとなり、共に持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきたい。新たな提言には、今後の連携や協創に向けた具体的なアクションを盛り込み、その実行部隊として部会を新設した。「心と心の触れ合う関係」を基礎として、“Build Forward Better”の精神で、未来志向で創発的な関係を構築していきたい。

佐々木 伸彦(日本貿易振興機構(JETRO)理事長)
ASEANは日本が外交・経済面で最も大事にすべき地域で、国益からも経済界が今後も活躍し続けることは重要だ。ASEANは堅実な経済成長を見せ、日本との関係性もより対等なものへとシフトしてきている。「中進国の罠」から抜け出すため、デジタル化とスタートアップの活用を行う国もあり、それは社会課題の解決にも活かされている。JETROはJ-Bridgeというプラットフォームを使って、日本企業とASEANのスタートアップが一緒にオープンイノベーションを行えるよう支援しており、大きなビジネスチャンスの場となっている。

東原 敏昭(経団連副会長/日立製作所会長)
ASEANにおいて、家電製品や半導体の製造拠点として企業活動を行ってきた。現在は社会イノベーション事業に取り組んでいる。今後は、社会インフラの高度化が見込まれ、インフラとデジタルを組み合わせた事業が発展していくことを期待している。また、ASEAN全体だけでなく、各国の政府や企業との関係を重視して信頼関係を築き、それぞれの課題を拾い上げ、現地の人財確保と育成を行うことも大切だ。経団連の一員として、提言を具現化し、社会実装していけるよう、イノベーティブなパートナーとともに尽力したい。

大庭 三枝(神奈川大学法学部教授)
東南アジアの重要性が高まっているのは米中対立の舞台になっているためだが、ASEAN 10カ国はそれぞれ複雑な外交を行うため、米国も中国も全体をつかむことは困難だろう。一方で、中国の台頭を警戒して、バランスを取る意味で日本への期待は強い。日本は歴史的に他国の人権や民主主義の問題には介入してこなかったが、東南アジアの政治的な安定を考えることは今後必要だろう。また、日ASEANの関係を経団連がフォーカスすることは、経済界を通したASEANの実像を伝える意味で、日本社会にとって良いことだと思われる。

木村 福成(慶應義塾大学経済学部教授)
ASEANは日本だけでなく世界各国と強い結び付きがあり、日ASEAN関係が変化していることを意識することが必要だ。生産ネットワークに入ることで雇用が創出されて中間層は増えたが、その後の開発戦略をどうするか悩んでいると思われる。さらに内政問題を抱えるところが多く、ASEAN全体の方向性が明確に示されていない状態だ。ASEANにおける日本のサプライチェーンはコロナ禍でも強固で、そのことが日本への信頼度を高めたとも言える。日本だけでは外交上の力がないため、東アジアで政策協調を図る必要性もあるだろう。

椋田 哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 国際社会におけるASEANの重要性
  • 新提言の狙いと背景
  • 経済面でのASEANの中心性
  • 新時代における日ASEAN関係
  • ASEANの市場・経済圏としての魅力
  • ASEANの地政学的重要性
  • ■ ASEANが直面する課題
  • 中進国の罠とASEANの統合
  • 自然災害とリスク管理
  • タイランド4.0への貢献
  • JETROが支援する海外スタートアップ連携
  • ASEANの政治的課題と外交戦略
  • ■ 日ASEAN連携による発展の可能性
  • 日ASEAN連携の頑健性
  • ASEAN経済社会のレジリエンス向上
  • 信頼関係を築くための人財育成・人的交流
  • JETROの今後の取り組み
  • 日ASEAN連携による課題解決
  • ■ 地球規模課題の解決に向けた協力
  • ミドルパワーとして期待される日ASEAN
  • 環境課題とバックキャストの必要性
  • 社会課題解決のためのオープンイノベーション
  • 対EU戦略と国際経済秩序の維持
  • アジア・大洋州地域委員会の今後の活動
  • ■ 経団連の活動への期待
  • 日ASEANの新たな関係性
  • 社会実装の具現化に向けて
  • ASEANと経団連の力の集結
  • 経団連が果たす役割

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