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月刊 経団連  巻頭言 ASEAN市場について

橋本 英二 (はしもと えいじ) 経団連副会長/日本製鉄社長

ASEAN(東南アジア諸国連合)は多様な言語、民族、文化等を相互に尊重しながら成長してきた。発展の段階も国によって異なり、1人当たりの鉄鋼消費量は、多くの製造業が立地するタイやベトナム等(250kg/年)と今後成長が期待されるインドネシアやフィリピン等(50kg/年)と多様である。現在の年間鉄鋼消費量は約8千万トンと世界の5%に留まるが、2030年には1億4千万トンに成長することが期待されている。

日本の鉄鋼業は、高級鋼を中心に輸出を行うとともに1980年代以降、最終加工工程等の事業展開を本格化し、ASEANがグローバルサプライチェーンの中核拠点として成長することを推進してきた。また、基礎となる質の高いインフラ整備を進めてきた。当社にとってASEANは、第2のホームマーケットと位置付けて注力してきた最重要市場である。

タイにおいては1996年に合弁事業(現NS-SUS)を設立し、幅広い用途に高品質の鉄鋼製品を供給してきた。タイの1人当たり鉄鋼消費量は、1990年の50kg/年から2020年には250kg/年に成長し、盤石なサプライチェーン構築に寄与している。現地人材の育成にも取り組み、NS-SUSはTPM(Total Productive Maintenance)活動で大きな評価を受けるなど自立的な改善活動が根付いてきている。

インフラ整備についても急速な都市化、物流の効率化、災害対策などの課題に対して日本の鉄鋼製品の技術を活かし、マニラの洪水対策や、ジャカルタのコンテナ港湾整備等を進めている。さらに、鉄鋼製品活用の基準化や鋼構造化等、ソフト面で現地有力大学や公的機関と連携することでも各国の発展を支えている。

近年、中国はASEANに対して経済、外交、軍事の影響力を増し、鉄鋼業の進出も積極化している。日本は厚い信頼関係を基にインフラ整備等に加えカーボンニュートラルやデジタル分野での連携を通して、今後とも課題解決と持続的成長に貢献することができる。当社は中国に先駆けて進出している現地事業を強化し、さらにより高い付加価値を生み出す事業展開へとステージアップし、引き続きASEANの成長に貢献していきたい。

※ 日本プラントメンテナンス協会が提唱する全員参加の生産保全活動

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