そこで、経団連では、提言「ウィズ・ポストコロナの地方活性化─東京圏から地方への人の流れの創出に向けて─」(2020年11月)を取りまとめ、地域活性化の課題や取り組みの方向性を提示した。本座談会では、地方への人の流れの創出に向けたこれまでの取り組みを振り返るとともに、魅力的な地域づくりのあり方について議論し、地方の活性化を真に実現していくための道のりを探る。
古賀 信行(経団連審議員会議長・地域経済活性化委員長/野村ホールディングス特別顧問)
経団連では2015年に地域経済活性化委員会を設置し、提言の取りまとめや各地経済団体とのビジネスマッチングなどの活動を行ってきた。コロナ禍での人の流れの変化は、地方にとって1つのチャンスと捉えるべきだ。地域は定住人口にこだわらず、関係人口、交流人口をもっと増やすことで、地域の活性化に繋げるべきだと思う。コロナ禍による変化を受け、提言「ウィズ・ポストコロナの地方活性化─東京圏から地方への人の流れの創出に向けて─」を取りまとめた。特にDXの進展は、官民連携のうえでも喫緊の課題である。一極集中是正の観点から、中央省庁の拠点のあり方や機能の分散をはじめとする行政システムの改革についても検討の余地があるのではないか。
麻生 泰(九州経済連合会会長)
今、世界における日本のプレゼンスは下がっている。この危機感を持ち、民間企業や各経済団体がリーダーシップをとって国を動かしていくべきだと思っている。九州では、九州、山口、沖縄の県知事9人と、九州の経済4団体の長による「九州地域戦略会議」で様々な取り組みを行っている。今、官民一体による2023年開催を目指した「ツール・ド・九州・山口」のプロジェクトが進行中だ。観光の大きな柱になると期待している。コロナ禍でローカルにアドバンテージが出てきた。地域活性化のため、地域の“とんがった魅力”づくりを続け、九州から日本を動かす「Move Japan forward from 九州」をミッションとして活動していく。
武内 紀子(経団連審議員会副議長・観光委員長/コングレ社長)
MICEは戦略実現ツールになる。地域の魅力や可能性をどう発信するのか、どう育てていくのか、MICEを活用して実現させていくことが出来る。MICEを活用して地元の魅力をどうビジネスに結び付けていくのか、地域と共に取り組みたい。コロナ禍でオンライン開催が増え、地域への経済波及効果をもたらすことが1つの課題である。しかし、オンラインで参加者は増加傾向にあり、コロナ禍が収束すれば、人は必ず戻ってくる。今は発信力を高めるときだ。観光の視点では、MICEのほか、ワーケーション、ブレジャーに注目している。観光産業は、地域の関係人口、交流人口の創出にも大きな役割を担っている。
吉村 猛(山口フィナンシャルグループ会長・グループCEO)
地方の人材不足はコロナ禍でも深刻化している。地域企業の人材支援を行うYMキャリアを設立し、副業・兼業マッチングを行った結果、コロナ前後で約1.5倍になった。例えばウェブマーケティングの副業人材を活用し売り上げが34%増加した事例もある。また、事業承継も切実な問題となっている。東京などから若手経営者候補を紹介し、事業承継に成功した例もある。特に経営者人材は不足している。一方、地域には地元の人も気付いていない大きな可能性を持った地域の魅力が埋もれていることもある。農業法人を設立して、そのことに気付いた。今後も地域価値向上会社として、様々なチャレンジで地域活性化に努めていきたい。
根本 勝則(司会:経団連専務理事)
- ■ 地方の活性化に向けたこれまでの取り組み
- 地域の経済団体との連携協定やビジネスマッチングを推進
- ワーケーション、ブレジャー、MICE、ユニークベニュー
- 「Move Japan forward from 九州」がミッション
- 地方はまだまだ人材不足、人材紹介のニーズが高い
- ■ 新型コロナを契機とした状況の変化
- 今こそローカルのアドバンテージを活用すべき
- 副業人材のニーズは加速しているが、地方の事業承継問題は危機的な課題
- MICEのオンライン開催が進む中、交流人口をいかに増やすか
- 定住人口にこだわらず、関係・交流人口を増やす
- ■ 地方の魅力づくりに向けた課題
- 我々が生涯現役の道を示し、次世代を惹き付けることが必要
- 魅力ある地域資源を再発見する必要がある
- ■ 地方の活性化に向けた今後の官民の取り組み
- MICEビジネスで地域を活性化する
- 産学官金でエコシステムを作り地域循環させていく
- 「ツール・ド・九州・山口」を官民一体で取り組む
- 地方自治体のデジタルガバメントの実現を
- 地域の中で熱意を持って行動する人が必要